第15回 【私を映画に連れてって!】史上初!映画とドラマ同時公開の『アナザヘヴン』と、フジテレビにいた立場ながら制作をまかされたテレビ朝日の連ドラ「スカイハイ」。映画とは?ドラマとは?

 ポニーキャニオンからアミューズに移り、しばらくしてテレビ朝日のプロデューサーから連絡があった。2002年の9月頃だが、当時の「金曜ナイトドラマ」(23時15分スタート)の視聴率が悪く、10月から制作費の事情もあり、韓国ドラマ「イヴのすべて」を放送すると言う。目の付け所はとても良いが「冬のソナタ」放送の前年で〝早すぎた韓流ドラマ〟とも称され、視聴率は惨敗。このまま行くと、この枠はドラマ枠からバラエティ番組枠に変更になるかもと。2003年1月ドラマの結果如何……との話があり、現状2~3%の数字を2桁に近づけるような企画を是非! という話に。 

 2003年1月スタートで3月までの放送。企画もキャストも任され、「アナザヘヴン」のこともあったので、視聴率を獲ることを一番に考えてみた。

 連続だが、1話完結もの。連続ドラマのディレクターはあまり知らないので、映画監督で、と決めた。昔、大好きだった「傷だらけの天使」(1974)も深作欣二、神代辰巳、工藤栄一ら錚々たる監督連。「探偵物語」(1979)も村川透、澤田幸弘、長谷部安春監督らでやっていた。

 アミューズに来て最初に製作したのが『Jam Films』で、もう一つが[DUEL PROJECT]として『2LDK』(堤幸彦監督)と『荒神』(北村龍平監督)だった。北村監督の『ヴァーサス』等(2000)が好きで、その頃、時々会っていたが、たまたま彼から映画の企画として「面白いですよ」と渡されたのが2冊の漫画『スカイハイ』(高橋ツトム原作)だった。彼の企画力というかアイデア、発想は溢れんばかりで、会う度にストーリーを面白く語ってくれる。

 1月放送スタートのドラマは遅くとも、12月初旬には撮影を開始しなくてはならない。普段、そんなに漫画は読まないが、この2冊は一気に読んだ。面白くて、中身が深い。テーマも良い。読んだ瞬間に、これで行こう! と。というより、企画をじっくり考える時間は持てなかった。もう10月で、キャスティングも本来であれば遅すぎる。

 その頃、言い方は良くないが、なかなかテレビ朝日のドラマにトップスターが出演してくれることはなかった。しかも深夜帯ドラマ。

 2か月弱の間で、シナリオ制作、スタッフ、キャストを決めなくてはならない。視聴率2%の枠を10%に近づけるのは至難の業である。

 案の定、主演が決まらなかった。アミューズには深津絵里さんらスター俳優が所属していたが、ハードルは高い。

 北村監督とも相談し、監督陣は固まっていく。1・2話目は、映画でもご一緒した中原俊監督、そして麻生学、鶴田法男、篠原哲雄監督の面々。北村監督は映画『あずみ』の撮影と重なっており、難しいと思ったが、ラストの10話目は「自分がやんなきゃ!」ということになった。脚本家も良い人たちが4人参加してくれた。

 脚本も進み、東映大泉撮影所にセットも組み……11月を迎え、いよいよ主演キャストを……と。

▲2003年にテレビ朝日系で放送されたドラマ「スカイハイ」は、高橋ツトムの同名コミックが原作で、すべてはこのコミックとの出合いから始まった。不慮の事故や殺人によって命を落とした者が訪れる「怨みの門」。主人公であるその門の番人であるイズコは、死者の現世の記憶や、残された者たちの様子を見せて、最後に死者に3つの選択を出す。「死を受け入れて天国で再生を待つ」(生)、「死を受け入れず現世で彷徨い続ける」(行)、「現世の人間を1人呪い殺し地獄へ逝く」(逝)。死者を送り出すイズコの決めセリフ「おいきなさい」には、「お生きなさい」「お行きなさい」「お逝きなさい」という、それぞれの意味がこめられている。2022年公開の北村龍平監督の映画『天間荘の三姉妹』も、高橋ツトムのコミック『天間荘の三姉妹 スカイハイ』が原作で、イズコを柴咲コウが演じている。

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