25.03.25 update

【帯津良一・89歳のときめき健康法】去りゆく看護師との、あのときめきをもう一度

人生百年時代――とはいえ、老いさらばえて100歳を迎えたくはない。
健康で生気みなぎるような日々を過ごせてこそ、ナイス・エイジングだ!
西洋医学だけでなく東洋医学、ホメオパシー、代替医療まで、
人間を丸ごととらえるホリスティック医学でガン治療を諦めない医師、
帯津良一の養生訓は、「こころの深奥に〝ときめき〟あれ」と説く。



 
連載17回

大願成就!今生の暇乞い(いとまごい)

文=帯津良一


 毎週月曜日の早朝に開かれる経営会議ではさまざまな議題が取り上げられるが、長年つとめあげた職員の退職もその一つである。年度変わりの三月いっぱいで退職する人が比較的多いので、一月中の会議で取り上げられることが多い。

 昔、病院長をしている頃は、毎週火曜日の午前中に院長回診というのがあった。二階、三階、四階の病棟のすべての入院患者さんを回診するのである。全部で99床。結構な時間を要する。それだけに病棟勤務の看護師さんとも親しく接していたものである。

 そのなかで、一人だけ、非常に色気を感じる美人がいた。しかし、神聖な仕事場である。そんな素振りを見せるわけにはいかない。じっと我慢の子である。ところが、ある日の夕刻、出張の仕事を終えて帰院した私と、日勤を終えて帰ろうとする彼女と狭い通用門のところで行き合ってしまったのである。

 
 あっという間のハグである。仕掛けたのは私にちがいないのだが、そんなことはわからないくらい瞬時の出来事であった。彼女に連れがあったので却ってよかったのかもしれない。その後、数回人目を忍んでハグに至ったが、名誉院長になって病棟回診が無くなった今はすっかり御無沙汰である。

 ところが病棟と無縁となって久しい今年の一月の会議で病棟主任のT女の三月退職予定が報じられたのである。まだ定年前だが、40年近く勤務している。やや小柄だが、きびきびした彼女の言動が好きだった。その上すばらしい美人である。鼻筋が通った上に外鼻孔が好い。はるか昔の就職時から目をつけていたのに一度たりとも酒席を共にしたことがないのだ。

 
 いや一度こんなことがあった。これまた帰宅しようとしている彼女を通用門のところでぱたりと逢い、その身嗜みに惚れたのである。すでに親しい鍼灸師の青年に、彼女と飲む機会を作ってくれないかと頼んだのである。

「先生のお名前を出しますか?」

「いや、今回は出さないでくれ」と。しかし見事に不発に終わったのである。

 今回、酒席を共にできなければ、もうそのチャンスはないだろう。いわゆる今生の暇乞いである。そこで親しい男性の看護師さんに頼んで三人で飲むことを提案してもらったのである。ところが「そんなぁ?!」の一言で片付けられたという。

 そして、つい先日、彼女が私の部屋に現れたのである。今日が最後なので挨拶に来たと言う。そして、

「ご提案のお別れの会も喜んでお受けいたします。すべては親友のW看護師にお伝えください」と。

 大願成就とはこのことだ!

▲帯津先生の若さの秘訣はいつも若き看護師さんたちに囲まれているから?



おびつ りょういち
1936年埼玉県川越市生まれ。東京大学医学部卒業、医学博士。東京大学医学部第三外科に入局し、その後、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。そして2004年には、池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設現在に至る。日本ホリスティック医学協会名誉会長、日本ホメオパシー医学会理事長著書も「代替療法はなぜ効くのか?」「健康問答」「ホリスティック養生訓」など多数あり。その数は100冊を超える。現在も全国で講演活動を行っている。講演スケジュールなどは、https://www.obitsusankei.or.jp/をご覧ください。


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