25.05.01 update

第24回【私を映画に連れてって!】浅田次郎『地下鉄に乗って』、大沢在昌『新宿鮫』で体験した映画プロデューサーと原作者との密な関係




1981年にフジテレビジョンに入社後、編成局映画部に配属され「ゴールデン洋画劇場」を担当することになった河井真也さん。そこから河井さんの映画人生が始まった。『南極物語』での製作デスクを皮切りに、『私をスキーに連れてって』『Love Letter』『スワロウテイル』『リング』『らせん』『愛のむきだし』など多くの作品にプロデューサーとして携わり、劇場「シネスイッチ」を立ち上げ、『ニュー・シネマ・パラダイス』という大ヒット作品も誕生させた。テレビ局社員として映画と格闘し、数々の〝夢〟と〝奇跡〟の瞬間も体験した河井さん。この、連載は映画と人生を共にしたテレビ局社員の汗と涙、愛と夢が詰まった感動の一大青春巨編である。

 

 これまで70本以上の映画に携わってきたが、多くは「オリジナル企画」と呼ばれるものだった。

 大別すると、映画は「原作あり」か「オリジナル」だ。

 アカデミー賞を見ていると「脚本賞」と「脚色賞」と2つの賞に分けられているが、日本での賞はほとんどが区別されていない。「Based on the novel」だと原作の小説を元に脚色、映画化されたことになる。「Original Screenplay」と表記があれば「オリジナル脚本賞」である。


『新宿鮫』(著:大沢在昌)、『リング』『らせん』(著:鈴木光司)、『手紙』(著:東野圭吾)、『地下鉄に乗って』(著:浅田次郎)など、思い起こせば10数本の原作をベースに映画化させてもらった。『孔雀王』(著:荻野真)などコミックの原作を加えると、思ったより多いことに気付く。

 映画に最初に関わった『南極物語』(1983)はオリジナル作品だが、実話ベースの話であり、ぼくも昭和30年~40年代のあらゆる教科書をコピーして資料にした覚えがある。動物写真家の岩合光昭さん等の写真集はすべて揃えたりして、ペンギンの種類や姿も教えてもらったのだ。

『私をスキーに連れてって』や『病院へ行こう』などは個々の体験ベースの映画でもあり、オリジナルストーリーが多くなった。あまり積極的に自ら本屋に行って、企画としての原作を求めることも無く、本屋で背表紙(装丁)を見るのが好きだった。

 それでもこれまで100人以上の作家の方とお会いし、その中で、十数本の映画が誕生したことは幸運だ。

 先般、日本テレビの連続ドラマではあるが、プロデューサー側の意図と、作家(原作者)とのコミュニケーション、各々の認識違いで不幸なことになってしまったことがあった。自戒の念を込めて、接していかなければならない。

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