new 25.06.30 update

第12回『東宝映画スタア☆パレード』池部 良 共演女優との年齢差に驚愕。女優たちに愛された二枚目スタア

今でもスタジオ入口に『七人の侍』と『ゴジラ』の壁画を掲げる東宝。〝明るく楽しいみんなの東宝〟を標榜し、都会的で洗練されたカラーを持つこの映画会社は、プロデューサー・システムによる映画作りを行っていた。スター・システムを採る他社は多くの人気俳優を抱えていたが、東宝にもそれに劣らぬ、個性豊かな役者たちが揃っていた。これにより東宝は、サラリーマン喜劇、文芸作品から時代劇、アクション、戦争もの、怪獣・特撮もの、青春映画に至る様々なジャンルに対応できたのだ。本連載では新たな視点から、東宝のスクリーンを彩ったスタアたちの魅力に迫る。


 70年代に入ると東宝以外の映画館にもよく通った。折しも東映は任侠映画から実録路線への転換期にあたっており、そんな中で見た『昭和残侠伝』シリーズには池部良が出演(※1)。最後は高倉健とドスを片手に殴り込みをかけるも死んでしまうのが常で、これにはどうにも納得できかねるものがあった。なにせ池部は、少し前までは東宝を代表する二枚目スタアだったからだ。

 
 元々は吉村公三郎の『暖流』(39)に影響され、映画監督を志した池部良。松竹大船の助監督試験に挑むが、脳貧血を起こして落第。それではと島津保次郎のシナリオ研究生になり、見事東宝入社を果たす。ところが戦争のため製作本数が減少、池部は希望の演出部ではなく文芸部へと回されてしまう。
 そこで池部を見初めたのが女優の英百合子。「あの子、ちょっとイカスじゃない」との一言がきっかけ(※2)となり、結局は島津の『闘魚』(41)で俳優になってしまうのだから、人生はわからない(※3)。


 東宝時代、池部は俳優として『雪国』(57)、『暗夜行路』(59)など重厚な文芸路線に加え、『足にさわった女』(52)や『都会の横顔』(53)といったライトコメディ路線でも大いにその存在感を示す。もちろん『恋人』(51)、『青い真珠』(同)で久慈あさみや島崎雪子と見せた瑞々しい演技も大いに評価せねばならない。今見ても、とにかく池部は若くてカッコよく、陰りを帯びた表情は実に魅力的だ(※4)。

▲『暗夜行路』(豊田四郎監督)では、公称で十三才年下の山本富士子と夫婦役を演じた イラスト:Produce any Colour TaIZ/岡本和泉


1 2 3 4

新着記事

  • 2025.07.10
    【お出かけ情報】いつもと違う「日光江戸村」の楽しみ...

    7月19日~8月31日

  • 2025.07.10
    【お出かけ情報】リニューアルした相模原市立博物館の...

    7月16日リニューアルオープン

  • 2025.07.10
    名プロデューサー・石井ふく子に口説かれて出演したホ...

    水前寺清子「ありがとうの歌」

  • 2025.07.08
    大都会のど真ん中〈麻布台ヒルズ〉と〈西久保八幡神社...

    8月8日~11日

  • 2025.07.08
    箱根の夏の風物詩〈芦ノ湖夏まつりウィーク花火大会〉...

    7月31日~8月5日

  • 2025.07.07
    いま、最も注目される建築家の一人、藤本壮介の初の大...

    応募〆切:7月25日(金)

  • 2025.07.07
    江戸幕府の隠された歴史と文化「大奥」が明らかに。特...

    応募〆切:7月15日(火)

  • 2025.07.03
    箱根登山電車の強羅駅から歩いて5分〈箱根 ゆとわ〉...

    応募〆切:9月26日(金)

  • 2025.07.03
    映画やテレビに引っ張りだこの阿部寛が、今度は天才ハ...

    7月4日(金)全国公開

  • 2025.07.03
    吉田拓郎がファンクサウンド&ドゥーワップ風コーラス...

    城 卓矢「骨まで愛して」

映画は死なず

特集 special feature  »

<特集>今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が語る「三屋清左衛門残日録」~時代劇にはまだまだ未来がある~

特集 <特集>今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が...

藤沢周平原作時代劇「三屋清左衛門残目録」の章

松田聖子デビューから45年、伝説のプロデューサー若松宗雄が語る誕生秘話〈わが昭和歌謡はドーナツ盤〉特別企画

特集 松田聖子デビューから45年、伝説のプロデューサー若松...

〈わが昭和歌謡はドーナツ盤〉特別企画

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!