第26回【私を映画に連れてって!】中島らもさんの小説『お父さんのバックドロップ』の映画化をめぐる予測不能な出来事

 1994年にフジテレビ映画部から編成部に異動し、ドラマ担当になった。「金曜エンタテイメント」という所謂2時間ドラマ枠担当にもなり、『お父さんのバックドロップ』をやろうと思った。但し、表題ほか4篇あり、わざとバックドロップ編は外した。これは「映画」のことがあったからなのか……。タイトルを「中島らもの変なお父さん」とし2作、「お父さんのロックンロール」で主演は片岡鶴太郎さん。「お父さんのカッパ落語」は陣内孝則さん主演で。これにはわかぎえふさんも出演している。演出は中原俊監督(映画『櫻の園』『12人の優しい日本人』等)。

 先頃、フジテレビで「続・続・最後から二番目の恋」が好評だったが、キョンキョン主演の「月9」ドラマ出演は30年ぶりである。30年前に編成のドラマ担当であったため彼女から相談され、一旦、その編成担当となりぼくが企画を書いた。その2年前に『病は気から 病院へ行こう2』(1992)を一緒にやった関係だからである。結果、1995年の10月期ドラマとして放送された「まだ恋は始まらない」だ。共演は中井貴一さん。脚本は岡田惠和さん。最初にぼくが書いたストーリーとは大きく変わったが、それでも視聴率は20%前後獲った。脚本家の腕に頼ることが大きいが、同じ歳の岡田さんはプロフェッショナルだった。

 それから10年か、それ以上か記憶がないが、岡田さんに会った時に「小泉今日子&中井貴一」で、もう一度連ドラ! の話は聞いたような気がする。「最後から二番目の恋」(2012)でこのトリオが復活するのだが、これは脚本家の強い「想い」の成果なのだと思う。「まだ恋は始まらない」と「最後から二番目の恋」はどこかで対になっている気がしている。前者は「運命の人に出逢えるか?」がテーマになっていたが、その答えが後者になっているのではと。

 「まだ恋は始まらない」の本読み、リハーサルの最初には参加していたが、10月にドラマがスタートした時にはフジテレビを離れ、ポニーキャニオンに席をおかせてもらい『スワロウテイル』(1996)の製作に入った。キョンキョンから「映画やった方がいいよ!」的なことを言われ、決断してフジテレビを飛び出したのかもしれない。ドラマの撮影現場には一度も行かなかった。

 『スワロウテイル』が無事ヒットに。日本アカデミー賞授賞式では隣向こうのテーブルが『Shall weダンス?』(1996/周防正行監督)チームだった。10数部門で同程度のノミネートだったが、ほぼ『Shall weダンス?』が最優秀賞を受賞した。『お父さんのバックドロップ』の断念から3年。見事なオリジナル作品でその年の映画賞は総なめした。ぼくはその間に、岩井俊二監督と出会い『Love Letter』(1995)、そして『スワロウテイル』を創った。「if もしも……」だが『お父さんのバックドロップ』の映画化がされていたらどうなっていたのだろうか……。

▲1995年10月から12月までフジテレビ系「月9」枠で放送され平均視聴率18.9%、最高視聴率20.8%を獲得したドラマ「まだ恋は始まらない」。主演は小泉今日子と中井貴一、脚本は岡田惠和が手がけている。江戸時代、身分違いの恋により心中を図った男女が現代に生まれ変わり、再び出会うまでを描いたラブコメディ。本作から16年後に、小泉と中井、そして岡田は「最後から二番目の恋」で再び結集することになる。竹野内豊、常盤貴子、坂井真紀、草彅剛らも出演。筆者はドラマスタート時には、編成部の後輩である石原隆氏(ドラマ「古畑任三郎」や、三谷幸喜映画のプロデユーサー)に後を託してフジテレビを離れた。




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