また、北海道の中でも小都市の小さな直営館では、かける映画がないという状況が出てくる。封切で5週間興行なんて言っても、北見東映など、人口が10万人規模の地方の街の映画館では、5週間のロングランなんかできない。そうすると私の出番になった。『山口組三代目』特集の登場となる。それにポルノ映画大会。「痴漢大会」「女医大会」「団地妻大会」、それに結構客が入ったのが「女教師大会」だった。オールナイトだけでなく、1週間通常上映などもしたくらいだった。封切映画上映が5週間もたないのに、それに代わって上映できる新作映画の準備がなかったのだ。そうは言ってもブロックブッキングの時代だから、映画館に映画を提供しなければいけなかった。ずっとデータと向き合う仕事をしていたから、他社の映画会社の数字なども調べて、この映画とこの映画を組み合わせると面白いなとプランニングする。映画館にいかに黒字を出してあげるか、それが商売だったのだ。最終的には北海道支社のセールスは私一人だったから、私が全部やらなければならなかった。北海道のセールスを一手に担っているという責任も大きかったが、楽しかった。

 函館に昔気質の方が館主をやっている洋画系の映画館があった。洋画に関しては東映は新参者だった。週ごとに請求書を出していたが、220万円の未集金があった。担当者が退職していたので、その映画館に私が集金に行くことになった。最終的に決着がついたのが、半額にするからという提案で、110万払ってもらうというものだった。半分倒産しているような会社だったから、それでも先方は払えないと言うので、じゃあ手形を出してもらうということで20万円の手形を5本切ってもらい、帰ってきた。減額でアジャストしたことを本社に報告しなければならなかった。不渡りにならなかったことに安堵した。1年間未回収だったのが半額とは言え倒産しかけているような会社から集金できたのだから、よくやったということになったのだが、事務所に単身で乗り込むにはやはりそれなりの覚悟が必要だった。社長と奥様と番頭さんの3人しかいなかったが、眼光鋭くどこか威圧するような感じがあって、怖かった。まあ、任俠映画宜しく目出度く手打ちと相成ったというところである。

二代目社長・岡田茂が『ゴッドファーザー』を観て気に入り製作を思いついたという『山口組三代目』。公開は1973年で、『仁義なき戦い』シリーズの第3作『仁義なき戦い 代理戦争』と同じ年に公開されている。山口組三代目組長・田岡一雄の自伝をもとに作られているが、実話としての生々しさはないものの、『仁義なき戦い』を上回る記録的な大ヒットとなった。なにしろ実存する組織と組長が実名で登場するという前例のない映画だけに、映画ファンのみならず、タイトルに惹かれて映画館へ足を運んだ観客も多かったことだろう。監督は〝任俠映画〟時代の多くの名作を誕生させた山下耕作で、高倉健が若き日の田岡一雄を演じた。丹波哲郎、松尾嘉代、桜町弘子、水島道太郎らも出演しているが、健さんと菅原文太との雪の対決シーンが話題になった。©東映

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