ジャニーズは1962年に結成されジャニーズ事務所から最初にデビューした4人組のグループで、真家ひろみ、飯野おさみ、中谷良、あおい輝彦からなる。残念ながら真家ひろみは故人。さすがのジャニーズファンでも若い世代には、知られていないかもしれないが、それでも現在も再演を重ね上演を続けている、ジャニーズ誕生を描き、その後に続くジャニーズ事務所のアイドルたちのヒットソングで構成する舞台『ABC座 ジャニーズ伝説』に映像出演していることで、あおい輝彦のことは知られているかもしれない。
デビュー曲は、64年にリリースされた「若い涙」だった。この曲はNHKの上質な大人のバラエティ番組として人気があった「夢であいましょう」の〝今月の歌〟から生まれた楽曲で、64年8月の歌として紹介された。作詞は永六輔、作曲は中村八大、編曲は服部克久が手がけている。リコーダーで始まるイントロが印象的な行進曲のような楽曲で、〝おーいおいと呼んでみよう〟というフレーズは今でも記憶に残っている。
メキシコのバンドであるロス・トレス・カバジェロスのラテンの大ヒット曲で、菅原洋一、布施明、グラシェラ・スサーナらも歌った「時計をとめて」は、66年にジャニーズもリリースし、コンサートの幕が下りた後、観客との別れを惜しむように、あおい輝彦がギターの弾き語りで歌い観客たちを感動させていた。King & Princeのメンバーだった平野紫耀にいたるまでジャニーズの定番の曲となっている。やはり66年にリリースされた浜口庫之助作詞・作曲の「涙くんさようなら」は、坂本九らとの競作(ジャニーズ以外のタイトルは「涙くんさよなら」だった)で、現在も多くの歌手によりカバーされ歌い継がれている昭和の名曲である。いずれも、舞台『ジャニーズ伝説』でも歌われている。
そして、67年にリリースされた「太陽のあいつ」。TBSで放送された週刊誌の記者・カメラマンを主人公にした同名ドラマの主題歌で、主役を演じたのは矢吹渡という俳優。若い頃の黒沢年男を思わせるような爽やかなスポーツマンタイプの精悍な好青年というイメージを今でも憶えている。相手役は、人気アイドル恵とも子だった。ドラマはTBSと東宝の共同製作ということもあり、取材相手として宝田明、加山雄三、浜美枝ら東宝俳優や山本嘉次郎、古澤憲吾ら東宝の映画監督をはじめ、芸能・スポーツ界のスターが実名でゲスト出演していた。第3話にはノンクレジットながら三船敏郎も出演している。ジャニーズのメンバーも、スタントマン志望の若者役で第9話に出演している。12話には、当時のGSブームを反映して、ザ・スパイダースがゲストだった。
「太陽のあいつ」は、作詞・岩谷時子、作曲・いずみたくのヒットメーカー・コンビによる楽曲で、この曲を聴くと、映画スターたちがテレビドラマにも進出し、若手俳優たちによる多くの〝青春ドラマ〟が作られていた60年代のテレビが懐かしくよみがえってくる。芦川いづみ、鰐淵晴子、松原智恵子、内藤洋子らが主演していた「山のかなたに」「陽のあたる坂道」「あじさいの歌」「河のほとりで」「雨の中に消えて」「光る海」「あいつと私」などの石坂洋次郎作品、夏木陽介や竜雷太が熱血漢の教師を演じ、岡田可愛、土田早苗、松本めぐみ(後に加山雄三と結婚)、柏木由紀子らが女子高生を演じていた「青春とはなんだ」「これが青春だ」などなど、今一度観てみたい。80年代の初めには日本テレビの深夜枠で、「青春とはなんだ」や、石坂洋次郎原作、鰐淵晴子主演の「風と樹と空と」などは再放送されていたのだが。僕の小学生、中学生時代のテレビドラマである。高校生や大学生の青春に憧れがあった。懐かしさと同時に「太陽のあいつ」は、帰らざる日々という意味で、僕に切なさといった感情も浮かび上がらせる歌でもある。ちなみにB面の「焔のカーブ」の作詞は石原慎太郎だった。この曲は脚本石原慎太郎、北大路欣也主演のミュージカル『焔のカーブ』のテーマ曲で、ジャニーズも出演している。