小柳ルミ子、天地真理と共に〝新三人娘〟と呼ばれ、〝世代的共感を歌うアーティストの始まり〟とも評価された〝ソニーのシンシア” 南沙織「色づく街」

 有馬三恵子&筒美京平コンビ以外の楽曲でも、前述の「人恋しくて」や「哀しい妖精」に加えて、荒井由実が作詞を手がけた「青春に恥じないように」、岡田富美子・作詞、林哲司作曲&編曲で、秋吉久美子、田村正和、中山仁、草笛光子らの出演により76年にTBS系列で放送されたドラマ「結婚するまで」の主題歌にもなった「愛はめぐり逢いから」、つのだひろ作詞・作曲の「街角のラブソング」、丸山圭子作詞・作曲の「木枯しの精」、そして、尾崎亜美が他のアーティストに初めて楽曲提供した、78年の資生堂・春のキャンペーンソングに起用された「春の予感-I’ve been mellow-」など、多くのアーティストからも楽曲提供されている。矢沢永吉も五大洋光名義で、アルバムに楽曲提供しているのには驚かされた。

 NHK紅白歌合戦にも77年まで、デビュー以来連続7回出場していたが、78年に、当時在学中だった上智大学での学業に専念するため、歌手活動にピリオドを打つことを発表した南沙織。同年9月25日放送のフジテレビ系列の音楽番組「夜のヒットスタジオ」では、「南沙織 サヨナラ企画」が放送され、同期の小柳ルミ子をはじめ多くの歌手仲間がかけつけた。ちなみに「17才」は森高千里が、「色づく街」は三田寛子がそれぞれカバーしシングル化されいずれもヒットしている。だが、やはりオリジナルをしのぐにはいたらなかった。
 今回、南沙織の曲を紹介するに当たっては、いずれも捨てがたく大いに迷った結果、この人この1曲という視点で「色づく街」に落ち着いた。実際91年に、14年ぶりに特別出場した紅白歌合戦でも、この曲が歌われており、南沙織自身にとっても、代表曲という思いのこもった曲だったのだと思える。その折の南沙織の紹介にあたっては、阿久悠が書いた紹介文を女優の渡辺美佐子が朗読し、バックにはデビュー曲「17才」のメロディを流すという演出がとられていた。
 よく櫛の通ったような長い黒髪で歌うシンシアは、同じ年齢の僕にとっても〝同世代的共感〟を得られるアーティストであり、僕が夢中になった最後のアイドルだった。今年も、やっと酷暑の日々が終わり、秋の気配が感じられるようになってセーターに袖を通したとき、知らず知らずのうちに、僕は50年前と同じように「色づく街」を口ずさんでいた。

文=渋村 徹 イラスト=山﨑杉夫

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