「君といつまでも」は65年12月に5枚目のシングルとしてリリースされた。作詞は岩谷、作曲は弾厚作、編曲は森岡賢一郎。カップリング曲は「夜空の星」で、こちらの編曲は寺内タケシが手がけている。レコード販売350万枚の大ヒットとなり、66年の日本レコード大賞の大本命との呼び声も高かったが、大賞は橋幸夫の「霧氷」が受賞し、「君といつまでも」は特別賞になった。66年のNHK紅白歌合戦にもこの曲で初出場を果たし話題をよんだ。青江三奈、「下町育ち」の笹みどり、西野バレエ団の金井克子、ジャッキー吉川とブルー・コメッツ、「バラが咲いた」のマイク真木、「骨まで愛して」の城卓也らもこの年が初出場だった。
それぞれ25組の出場歌手のうち、白組は中盤要の13番目にレコード大賞受賞橋幸夫の「霧氷」、14番目にレコード大賞最優秀歌唱賞舟木一夫の「絶唱」、15番目に特別賞加山雄三の「君といつまでも」という最強の布陣で臨んだ。紅組の対戦相手はそれぞれ大ベテランの江利チエミ、大ヒット曲園まりの「夢は夜ひらく」、歌う映画スタア吉永小百合だった。また白組司会の宮田輝は、「白組最後のお願いでございます」と、人気絶頂期の舟木と加山を引き連れ客席へ挨拶に降り立っている。
「君といつまでも」は何と言ってもセリフが大人気で、ワンコーラスを歌い終えた加山が、人差し指で鼻をこすりながらテレた表情で「ぼかぁ、幸せだなぁ……」と言えば客席が大いにわいた。そして「死ぬまで君を離さないぞ、いいだろ」と、ここでニヤッと笑うのが女性たちのハートを撃ち抜いた。まさに、究極とも言えるストレートな求愛だ。
加山は紅白歌合戦に2022年までに通算18回出場し、メドレーも含めると「君といつまでも」を4回歌唱している。アルバム収録曲でシングル・リリースはされていないにも関わらずスケールの大きな「海 その愛」も4回も歌唱している。2022年6月19日にコンサート活動から引退することを発表し、同年の紅白歌合戦が人前で歌う最後となっているが、このときに歌ったのも「海 その愛」だった。86年から3年連続で白組司会も務めた。コンサート活動は行われていないが、音楽活動はその後も続けている。
本年4月に88歳の誕生日を迎えた若大将。加山雄三が80歳を迎える2017年に弊誌でも特集「加山雄三 80歳の青春グラフィティ」を組み、インタビューも実施した。
「長年にわたり第一線で音楽活動を続けてこられた原動力は?」と質問すると、「音楽のプロだと思ったことは一度もないし、音楽を仕事だと思ったこともない。音楽は生涯をかけて愛する親友だから」という答えが返ってきた。好きだから、趣味だからずっと続けていくことができる。加山雄三の音楽は永遠のアマチュア・スピリッツにより生み出されてきたと言えるだろう。
発売から60年経っても色褪せることなく「君といつまでも」は、さらに人々の想いを吸収しながらエバーグリーンの輝きを放っている。
文=渋村 徹 イラスト=山﨑杉夫
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