わが昭和歌謡はドーナツ盤

1969(昭和44)年に大ヒットしたフォークソングの名曲「真夜中のギター」を歌う美人で西田佐知子似の千賀かほるに想いを寄せて、いつも夜明けまでギターを弄っていた

 しかし、1969年8月10日に発売され、オリコンチャートでは10月20日から翌年1月5日までベストテンにランクイン。最高位は4位で、11月24日から12月8日まで3週にわたった、と記録されている。この年の第11回日本レコード大賞・新人賞を獲得、いかに大ヒットだったかが、うかがえる。因みに売上げ枚数は約45万枚。高田みづえ、石川さゆり、ダ・カーポ、岩崎宏美、徳永英明、島谷ひとみ(2010年、シングルCD発売)…多くのアーティストによってカバーされてきた。

 この楽曲は、前述の吉田拓郎ら70年代に飛び出すフォーク歌手たちがメッセージ性、社会性を問うことより、恋愛や青春の生き方など個人の心情をモチーフにした楽曲に変化してゆく予兆のような気がしてならない。フォーク調の歌謡曲だからヒットした、と後になってボクはしたり顔で自答したことだった。

 
 —冷えてきた街のどこかに、愛を失って今にも泣きそうに、じっとギターを弾いている似たもの同士の淋しがり屋がいる。長い冷たい夜だからそのまま黙って夜明けまでギターを弾いていてよ—

 と詩っている。字面からは失恋した暗い心情に届いた、誰かが爪弾くギターの音。私と同じ淋しがり屋がどこかにいる、とは、どうにも青春の挫折感溢れる楽曲だが、千賀かほるの歌唱は明るく希望の歌のように屈託がなかった。

 ボクはPP&Mやジョーン・バエズをマスターしたいとギターを買ったのは中学生の頃だったか。自己流の練習曲は、映画「禁じられた遊び」の主題歌(前回紹介した円広志さんと一緒です)だった。結構真面目に練習に励んだが、アルペジオの指使いがどうにも下手くそで挫折してしまった。ストロークなら何とかなるのに。ギターをモノにしたと堂々と人前に出られるのはストローク一辺倒では話にならない。数年間、押入れで埃をかぶっていたアコースティックギターを引っ張り出し「真夜中のギター」に挑戦してみたのは、大ヒットの渦中だった。基本コードは「Cコード」でそう難しくはない。

〈第一小節 C→ G7→ Dm→ C→ G7→ C〉左手のコードは何とか押さえられたが右手のアルペジオ奏法は、よほど練習を積まないと無理なのだ、再び挫折。20歳にして「もしもギターが弾けたなら」という望みはあえなく打ちのめされたのだった。まぁ、あの頃はボウリングにも熱中していたし、彼女にも夢中だったからなぁ、とわが体たらくを詰る(なじる)ことなく慰めてきた。しかし、「真夜中のギター」を折に触れ口ずさむのは、ついにギターをモノにできなかったコンプレックスが尾を引いて、いじけていた淋しがり屋になっていたのかもしれない。

 よし、本稿で白状した勢いを借りて、再び三度ギターを引っ張り出してみよう!喜寿の手習い? 笑うな!

文:村澤 次郎 イラスト:山﨑 杉夫

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