仲人を務める世話好きなおじさんやおばさんのいた昭和

仲人を務める世話好きのおじさんおばさん

 見合いが普通だった時代には、『細雪』の井谷夫人のように、見合いの世話をする仲人好きもいた。

 清水宏監督の母ものの傑作『母のおもかげ』(59年)には、東京の下町、佃町あたりに住む世話好きのおじさん(見明凡太郎)が出てくる。

 これまでもう二十九組もまとめたと自慢している。今度三十組目に挑戦しようとしている。そして、妻に死なれた、小学生の男の子がいる水上バスの運転手(根上淳)と、夫に死なれた、女の子のいる女性(淡島千景)を見合いさせる。

 連れ合いを亡くしたどうしを結ばせようとさせるところが人情家の下町のおじさんらしい。子供がいるので最初は難しかったが最後は新しい四人家族が生まれる。

 美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみ主演の青春映画『ひばり・チエミ・いづみの三人よれば』(64年、杉江敏男監督)では三人娘の女学生時代の恩師(清川虹子)が世話好きおばさん。

 学校を卒業した三人を家に呼んで見合いを強くすすめる。さすがに現代娘たちは見合いは嫌と思っている。そこで三人は一計を案じて知り合いの男性をそれぞれ恋人役にする。無論、それが本当の恋人になってゆくのはいうまでもない。一九六四年といえば東京オリンピックの年。この頃に徐々に見合いは姿を消していったようだ。

車に乗り込む花嫁。良家のお嬢様であろうか、なにやらゆかしいおごそかな儀式といった趣である。ドアを開けているモーニング姿の男性は父親かもしれない。埼玉県加須市周辺の昭和32年頃の写真。

かわもと さぶろう

評論家(映画・文学・都市)。1944 年生まれ。東京大学法学部卒業。「週刊朝日」「朝日ジャーナル」を経てフリーの文筆家となりさまざまなジャンルでの新聞、雑誌で連載を持つ。『大正幻影』(サントリー学芸賞)、『荷風と東京『断腸亭日乗』私註』(読売文学賞)、『林芙美子の昭和』(毎日出版文化賞、桑原武夫学芸賞)、『映画の昭和雑貨店』(全5 冊)『我もまた渚を枕―東京近郊ひとり旅』『映画を見ればわかること』『銀幕風景』『現代映画、その歩むところに心せよ』『向田邦子と昭和の東京』『東京暮らし』『岩波写真文庫 川本三郎セレクション 復刻版』(全5 冊)など多数の著書がある。

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