西城秀樹 青春のアルバム

2003年に公演先の韓国で脳梗塞を発症す るも、闘病の末復帰し翌年にはステージ に立ち「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」はじめヒット曲を披露していた。また、コンサー ト活動に加え、09年にはNHK連続テレビ 小説「つばさ」に出演、11年にはミュージカ ル『マルグリット』に出演するなど俳優としても意欲的に活動し、デビュー40周年記念コンサートを開催したが、同年、脳梗塞の再発が判明する。だが、決してあきらめない、生きることに前向きな生命力で、再びステー ジに立つまでに回復し、亡くなる前月までコンサートに出演していた。

 思い出の番組をリクエストするコーナーで秀樹は「恐怖のミイラ」や「アラーの使者」という、同世代がグッとくるシブいヒーロー番組を提示して、 先述した「あこがれ共同隊」のラストシーンも紹介された。スタッフロールが流れるエンディングの曲は、 79 年の「8時だよ!全員集合」のコント間で披露された「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」。
 いまもCMなどで歌い継がれるスタンダードポップスだが、僕が最後にライブで眺めた西城秀樹もこの曲を歌っていた。
 
 それは「青春のポップス」出演から2年後の02 年夏。ロッキングオン社の 雑誌「サイト」の連載エッセーの取材で神宮球場の花火大会を見物に行った。派手な仕掛けがある、というので一度現場で眺めてみたいと思っていた のである。


 スポンサーの消費者金融の当時ブレイクしていたダンサーズのパフォーマンスなんかもあったこのライブ、目玉 の花火打上げ直前に登場した秀樹のステージは花火を食うほどに素晴らしかった。まず、「ギャランドゥ」をぶちかまし、「情熱の嵐」「傷だらけの ローラ」があって、締めはもちろん「YOUNG MAN」。若いチャパツの浴衣ギャルたちも含めて、スタンドの観客総立ちでY・M・C・Aの振りを合わせている様子が当時のエッセーに綴られている。
 西城秀樹は大阪球場のライブが有名だったが、花火があがる神宮のスタジアムもよく似合っていた。

従来の大阪球場に加え、1978年には東 京・後楽園球場でも第1回コンサート「BIG GAME ’78 HIDEKI」を開催した23歳の ヒデキ。ヒデキのスタジアム・コンサートと言 えば、クレーンやレーザー光線を使用した り、と大仕掛けで派手な演出が売りだった。 79年の雷鳴が響き、稲妻に照らし出され、 豪雨の中歌い続けたヒデキの姿は今も伝説 として語られている。その後も81年まで計4回コンサートを行い、後楽園球場最多公演アーティストとして名を刻まれている。

information

妻・木本美紀著 『蒼い空へ 夫・西城秀樹との 18年』 小学館から発売中 1,512円(税込)

西城秀樹シングル曲の コンプリート・ボックス 『HIDEKI UNFORGETTABLE HIDEKI SAIJO ALL TIME SINGLES SINCE1972』 2019年5月16日発売

さいじょう ひでき
1955年(昭和30年)4月13日、広島市に生まれる。幼少期から洋楽に親しみ、ジャズスクールに通い、エレキギター、ベース、ドラムを勉強した。小学4年生で兄とエレキバンド「ベガーズ」を結成、中学2年生のときメンバーを入れ替え「ジプシー」を結成し、リードボーカルとなった。この洋楽通ぶりが、デビュー後、他のアイドルとは一線を画す個性となった。72年3月25日「恋する季節」で歌手デビュー。キャッチフレーズは〝ワイルドな17歳〟。「チャンスは一度」でトップアイドルの仲間入りを果たし、野口五郎、郷ひろみと共に〝新御三家〟と称された。「情熱の嵐」「ちぎれた愛」「愛の十字架」「薔薇の鎖」「激しい恋」「傷だらけのローラ」「君よ抱かれて熱くなれ」「ブーメランストリート」「ブルースカイブルー」「ギャランドゥ」など数々のヒット曲があるが、なかでも79年発売の「YOUNGMAN(Y.M.C.A.)」はオリコンで5週連続1位に輝き、日本歌謡大賞はじめ数々の賞でグランプリに輝いた。テレビ「ザ・ベストテン」では9週連続1位、番組史上唯一の最高得点9999点を2周連続で獲得した。また、俳優としても活躍し、映画『愛と誠』『傷だらけの勲章』、テレビドラマ「寺内貫太郎一家」「あこがれ共同隊」「つばさ」、舞台『わが青春の北壁』『デュエット』『ラヴ』など数多くの作品に出演している。〝ヒデキ、感激!!〟でおなじみの「バーモントカレー」のCMには73年から12年間出演した。03年と、11年に脳梗塞を発症するもリハビリに励み、亡くなる前月まで現役としてステージに立っていた。18年5月16日逝去、享年63。

いずみ あさと
コラムニスト。1956年、東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、東京ニュース 通信社に入社、「週刊TVガイド」の編集に携わる。84年退社後フリーランスとして 新聞、雑誌などで執筆活動を続けている。 CMソングの大家・三木鶏郎の評伝『トリロー』 が5月に新潮選書から刊行される。

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