ユーミン、半世紀の音楽旅

▲デビュー以来毎年行っているコンサートは、派手な演出を駆使したエンターテインメントとして人気を呼び、公演チケットは常に即日売り切れ状態に。斬新な仕掛けと奇抜な衣装で観客を裏切らない演出が毎回繰り広げられる。99年にはロシアのサーカス団50名を参加させたユーミンスペクタクル「シャングリラ」を実施。ツアー・クルー200名、11トントラック55台、日本興行史上空前の規模だった。4年ぶりに第二弾となる「シャングリラⅡ ~氷の惑星~」を全国7都市で51公演を行い、その後香港コロシアムでも公演を成功させた。07年の「シャングリラⅢ~人魚姫の夢~」を合わせ、合計で100万人を動員した。78年から続く「逗子マリーナコンサート」は通算17回開催。81年から続く「苗場プリンスホテル」でのコンサートは通算35回開催されている。▼

             

 バブルの頃だろうか、ボジョレーヌーヴォーというものを教えてくれた人が、「この新酒が出るのをみんな待ってるんだよ」と言ったとき、ユーミンのアルバムみたいだなと思ったことがあった。

─── アルバムが出るのを待つなんて、やっぱり好きなんじゃないか、それもかなり。

 そうかもしれない、そうなのだろう。でも、ユーミンはいつもそこに流れていて、自分の身体の中の音楽を歌ってくれて、そんな中ではアルバムを買いに行くのも自然なことだった――やっとわかってきた、ユーミンは好きとかきらいとか、その範疇を超えている。

 ユーミンは、今年でデビュー五十周年だそうである。そうと聞いて、半世紀も第一線で活躍するのはすごいことだと思ったが、それは必ずしも感慨ではなかったような気がする。五十年も何も、ユーミンははじめからいたような気がするからかもしれない。だってユーミンは、自分の中の音楽を歌ってくれるのだから。

 ユーミンが過去に発表した歌は時代を超え、今も折々に流れている。歌い続けられるスタンダード。ユーミンは、いつもいる。今、そしてこれからも。

「過去も未来も星座も越え」て─── 。(あ、歌詞を覚えてる)

▲ルオーの「道化」、観葉植物に囲まれた部屋で楽曲の制作をしていたユーミン。▼

ありよし たまお

作家。大阪芸術大学教授。東京生まれ。早稲田大学哲学科、東京大学美学藝術学科卒業。ニューヨーク大学大学院演劇学科修了。1990 年、母・佐和子との日々を綴った『身がわり』で坪田譲治文学賞受賞。『ニューヨーク空間』『雛を包む』『車掌さんの恋』『風の牧場』『恋するフェルメール 37 作品への旅』『カムフラージュ』『美しき一日の終わり』『ソボちゃん いちばん好きな人のこと』など多数の著書がある。最新刊は自伝的小説『ルコネサンス』(集英社)。(撮影:織田桂子)

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