Special Feature

写真家・秋山庄太郎
女性ポートレートの美学

 

 

「婦人科」「讃婦人科」──。女性ポートレートを得意とした写真家秋山庄太郎はそんな異名をとった。
「美しきをより美しく」を信条とし、美しい女優たち本人が気づいていない美しさを捉えた肖像写真を撮る。
雑誌の表紙やグラビアを飾った女優は五千人をはるかに超え、生涯に撮った美女は数万人の域に。
「秋山庄太郎に撮ってもらうことが、スター女優への登竜門」と言われ、 新人女優たちは秋山庄太郎の構えるカメラの前に立つことを競うほどだった。
原節子と同時代の銀幕女優たちから始まり、本誌掲載女優のほかにも、山本富士子、池内淳子、若尾文子、浜木綿子、倍賞千恵子、栗原小巻、大原麗子、内藤洋子、夏目雅子、山口百恵、古手川祐子、黒木瞳、松田聖子、後藤久美子…… 昭和から平成の世を彩ったそうそうたる美女たちを撮りまくった。
風化したり、忘れ去られたりしてはならないフィルムと、令和にも語り継がれていくべき逸話や挿話の数々を紐解きながら、2020年に生誕百年を迎える秋山庄太郎ならではの女優ポートレートの世界を彷徨してみたい。

文=上野正人
企画協力=齋藤智志(秋山庄太郎写真芸術館主任学芸員)、上野啓佑(同学芸員) 写真提供=秋山庄太郎写真芸術館、秋山伊都子、上野紀子

大スター原節子を撮る

 

「秋山さんがご自分の写真集を出したいというお話をきいたのは半年も前のこと。遭うたびに『その後どうして?』 と尋ねると、『ええ、慎重に準備中なんです。まあ近いうちに……』というのが、秋山さんの決まった答えでした。それが愈々(いよいよ)完成することになって、 私は心から『おめでとう』と肩を叩きたいらいです」

1951年、秋山庄太郎上梓の写真集『美貌と裸婦』に掲載された原節子の寄稿である。続けて、

「私のポートレートも2、3枚含まれ ている由、そのどれも私の好きなものばかり。殊に『湖畔秋色』は今までの私の数多いポートレートのなかでいちばん秀れているという家中の意見で、滅多に写真をねだったことのない私 が、20枚ほども伸ばしていただいたほどです」(抜粋)

1935年、映画『ためらふ忽れ若人よ』を見た 15 歳の秋山庄太郎は、銀幕の原節子に魅せられ、虜になった。 その時、秋山庄太郎は将来自分が原節子を撮影することになるとはまったく 想像できなかった。まして、手作り料 理を振舞われたり、酒を酌み交わしたり、娘の名付け親になってくれる仲に なるとは……。

 

……続きはVol.42をご覧ください。

昭和28年(1953)に美術家団体二科会に写真部ができた。 二科会写真部創立会員の4人の写真家。 左から早田雄二、秋山、林忠彦、大竹省二。 西麻布の秋山スタジオにて。

あきやま しょうたろう

1920年東京・神田生まれ、父富三は千葉県鋸南町出身で 青果商。3歳まで横浜で育ち、関東大震災被災後、目黒・五本木、谷中・清水町などに居住。13歳のとき、愛犬が背伸びをするところを撮ったのが最初の写真で、以降、趣味となる。府立第八中学校(現・都立小山台高校)を経て、早稲田大学商学部卒業。大学在学中、資生堂社長で写真家の福原信三が主宰する「日本写真会」で作品『猫を捨てる』が福原から評価される。

戦後、銀座に写真スタジオ「秋山写真工房」設立後、近代映画社勤務、1951年フリー。日本写真家協会、日本広告写真家協会、二科会写真部、日本写 真協会、全日本写真連盟、日本写真芸術専門学校などで要職をつとめ、写真界の発展に尽力。紫綬褒章・旭日小綬章受章。

「週刊現代」(講談社)とライバル誌「週刊ポスト」(小学館)の表紙連載を四半世紀にわたってほぼ同時期に担当。 「女性」ポートレートをはじめ、「舞台俳優」「文士」「芸術家」 「政治家」「子供」のほか、「花」「風景」「人形」「静物」「伝統工芸」「動物」「スナップ」など撮影ジャンルは多岐に及ぶ。

2003年畏友林忠彦を記念する写真賞選考会場で急逝。 2007年遺志に基づき東京・南青山のアトリエに秋山庄太郎写真芸術館設立。写真による福祉支援も目的として2002年 に自ら創設した「秋山庄太郎『花』写真コンテスト」では、災害被災地の施設等に入賞作品や秋山庄太郎撮影作品を寄贈しつづけている。

主著に、記事内掲示のほか、『おんな・ おとこ・ヨーロッパ』(文藝春秋新社、1961年)、『花・女』(主婦と生活社、1970年)、『作家の風貌 一五九人』(美術出版社、1978年)、『画家の風貌と素描』(サン・アート、1980 年)、『花―365日』(小学館、1990年)、『薔薇よ! Rose365』 (集英社、1997年)など。映像作品では『花舞台』[音楽:中村由利子](CBS/SONY、1990年)、『MELODY』[同] (スリーノーマン、2012年)などがある。

生誕百年記念展

2019年千葉県・佐倉市立美術館で開催の『美しきをより美しく』を皮切りに、2021年まで秋山庄太郎生誕百年を記念する写真展が、ゆかりの深かった山形県米沢市や栃木県那珂川町などで予定されている。 アトリエを構え、ポートレート撮影もしていた拠点で、生涯愛した米沢市では『秋山庄太郎 PARIS 1960/before and after』展を開催。

芸術的評価の高い秋山庄太郎パリ撮影作品群を中心に、没後発見されたパリでの日記など新しい視点から秋山写真芸術の背景に迫る。あわせて、秋山庄太郎を見出した写真家・福原信三のパリ作品、福原創始の日本写真会有志作品、秋山が惚れ込んだ造形作家・友永詔三作品のほか、写真愛 家のステータスともなっている秋山庄太郎記念米沢市写真文化賞作品なども展示予定。

〔会期〕2020年10月8日~11月1日(予定) 〔会場〕山形県米沢市よねざわ市民ギャラリー
〔会期〕2021年(予定) 〔会場〕栃木県那珂川町 馬頭広重美術館


Category

from Readers

Club