第3幕
INTERVIEW 岩崎加根子
撮影=福山楡青/ 取材・文=二見屋良樹
受験科目に数学がないからと俳優座を受験し、
研究生候補から1949年に養成所設立と同時に第1期生となり、
1952年の卒業と同時に俳優座に入団、現在は劇団代表を務める岩崎加根子さん。
91歳の岩崎さんは、在団歴72年目を迎え、まさに俳優座と共に歩む人生と言えよう。
本年も7月と11月に2本の舞台に立つ。
千田是也の近代俳優術の薫陶を受け、日本新劇界の語り部とも言える岩崎さんに
新劇界を牽引してきた俳優座の神髄を語っていただいた。
岩崎加根子という女優を初めて知ったのは1963年に放送されたNHK大河ドラマ第1作「花の生涯」だった。私は、当時小学生ではあったが、彦根の遊郭きっての売れっ子芸妓・雪野太夫を演じていた俳優・岩崎加根子の印象は、そのとき強烈に私の中に焼き付けられた。舞台俳優・岩崎加根子はまだ知らなかったが、それ以降映画やテレビドラマでいくつもの岩崎加根子に出会った。
中村錦之助(後に萬屋錦之介)、杉村春子共演映画『反逆児』での徳姫、錦之助の『宮本武蔵 一乗寺の決斗』での吉野太夫、石原裕次郎の相手役を務めた『太陽への脱出』、裕次郎、浅丘ルリ子共演の『花と竜』に『夜霧のブルース』、勝新太郎と共演の『座頭市地獄旅』、熊井啓監督作品で加藤剛、栗原小巻共演の『忍ぶ川』、山田洋次監督『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』など映画五社すべてに出演している。テレビでも木下惠介アワー第一作の「女と刀」、佐久間良子、杉村春子共演の吉屋信子原作の「徳川の夫人たち」、大河ドラマ「春の坂道」での二代将軍秀忠の正妻お江与、レギュラー出演していた「水戸黄門」シリーズなどなど、私は数々の映像作品で、岩崎加根子になじんでいた。俳優座に限らず、文学座、劇団民藝でも、多くの新劇俳優たちが、映画やテレビドラマを支えていたのだ。