文=北原照久
2012年10月1日号 PERSON IN STYLE 《美しいとき》より
美人で、利発で、清潔で、負けん気が強く、ちょっと生意気だけど情にも厚い。
ただはじらうだけの山の手のお嬢さんでもなければおませなだけの下町娘でもない。
古風な部分と現代性とを持ち合わせる魅力的な女性。
昭和30年代や40年代の日本映画にはそんなチャーミングなヒロインが存在していた。
神田生まれの庶民性と清楚なお嬢様のイメージを備える星 由里子さんは、そんな昭和映画の代表女優だ。
映画『若大将シリーズ』のヒロイン澄子には、星さんの魅力が集約され、若者たちを虜にした。
北原照久さんも、その〝澄ちゃん〟に熱をあげた一人。青年の心の中には、永遠に夢の恋人が住み続けている。
撮影:渞忠之 撮影協力:ハイアットリージェンシー東京
星 由里子さんにお目にかかれる日がくるとは、夢にも思っていませんでした。しかも、二人一緒に一枚の写真におさまるなんて、まだ夢心地です。普段はあまり緊張しない僕なのですが、この日ばかりは長年の夢がかなった嬉しさと、星さんの放つ特別なオーラで、異常に緊張してしまいました。その緊張を緩和させるかのように、一人ではしゃぎまくっていたような気がして、思い出すと赤面してしまいます。なにせ、十代のころから今も繰り返し観ている映画『若大将シリーズ』の若大将こと田沼雄一と澄ちゃんのように、星さんの隣に座らせていただいたのです。胸がたかなるのも当然です。
僕の人生の指針は、加山雄三さん。高校生のときに会いたいと思って、思い続けて52歳のときにお会いすることができました。スポーツ万能、ギターも弾くし、歌もうまい、作曲までこなす。とにかくカッコいい。加山さんイコール田沼雄一だった僕の志望校は、若大将が通う京南大学だったほど、『若大将シリーズ』に入れ込んでいたので、若大将の恋人〝澄ちゃん〟こと星 由里子さんに会えたことに、どれほど感激しているか、おわかりいただけると思います。
僕の中の澄ちゃんは、控えめだけど芯は強くて自分自身の意思をもち、スチュワーデス(今ではキャビンアテンダントですね)など、当時の女性たち憧れの花形の職業に就き、仕事にも一生懸命に取り組む女性。働く女性が今ほど多くなかった時代に、澄ちゃんを目標にした女性たちも多かったはずです。
若大将と出会って恋に落ち、何かの事情でいつもしばらく会えず、離れてしまうストーリー展開のあやしい雲行きにハラハラしますが(恋に障害はつきものだったのです)、最後には必ず戻って来てくれる、そういう自分自身の気持ちに素直なところもある女性です。アメリカンフットボールやスキー、水泳、ボクシングなど若大将はいつも大学スポーツの花形選手です。そして、試合で若大将がピンチのときに澄ちゃんが戻って来ると、若大将は俄然元気を取り戻し勝利する、という胸がスカッとするストーリー展開。澄ちゃんが、完璧な勝利の女神でいてくれるのも心強いのです。