わが心の昭和アイドル&スター

森口博子が憧れの人と公言したテレビドラマ「Gメン’75」の顔と言えばこの男。苦み走ったニヒルな三つ揃えのスーツがよく似合う昭和の二枚目 若林豪(俳優)

プロマイドで綴る わが心の昭和アイドル&スター

大スター、名俳優ということで語られることがない人たちかもしれないが、
青春の日々に密かに胸をこがし、心をときめかせた私だけのアイドルやスターたちがいる。
今でも当時の映画を観たり、歌声を聴くと、憧れの俳優や歌手たちの面影が浮かび、懐かしい青春の日々がよみがえる。
プロマイドの中で永遠に輝き続ける昭和の〝わが青春のアイドル〟たちよ、今ひとたび。

企画協力・写真:マルベル堂


 若林豪の代表作はと訊かれると、やはり毎週土曜日の夜9時から放送されていたテレビドラマ「Gメン’75」を挙げる人が多いのではないだろうか。もちろん、それ以前にも平幹二朗が主役の原田甲斐を演じた「樅ノ木は残った」、中村錦之助(後に萬屋錦之介)が主役の柳生宗矩を演じた「春の坂道」での荒木又右衛門役、平が斎藤道三、高橋英樹が織田信長、近藤正臣が明智光秀を演じた「国盗り物語」での斎藤義龍役などのNHK大河ドラマをはじめ、竹脇無我主演の「江戸を斬る 梓右近隠密帳」や、大型時代劇「徳川三国志」での柳生十兵衛役をはじめとする時代劇、小林旭と共演の「ターゲットメン」、宇津井健の弟を演じた「燃える兄弟」などのアクションドラマで、その名と顔を知られていた。

「Gメン’75」の放送開始は1975年5月24日。若林豪がGメンとしてレギュラーになるのは77年の105話からで、その後82年4月3日の最終回355話まで約5年間レギュラーとして出演した。

(C)マルベル堂



 若林豪は、澤正(さわしょう)と呼ばれ親しまれた澤田正二郎により17年に結成された新国劇の出身である。新国劇は、歌舞伎よりリアルな立ち回りを多用した時代劇で男性客の人気を得た劇団で、島田正吾、辰巳柳太郎の両御大の活躍により『大菩薩峠』『国定忠治』『王将』などのヒット作を生んだが87年に解散した。

 緒形拳は新国劇在団時代の65年に大河ドラマ第3作「太閤記」の主役豊臣秀吉役に抜擢され一躍人気者となり、続く4作目の「源義経」にも弁慶役で続投している。ちなみに義経役は尾上菊之助(現・七代目尾上菊五郎)、静御前を演じたのは藤純子(現・富司純子)だった。当時、人気絶大の舟木一夫も悲劇の公達・平敦盛役で、2作目「赤穂浪士」に続き2度目の出演となり、「平凡」「明星」「近代映画」といった芸能誌で大きな話題になっていた。

 旧くは大河内傳次郎、大友柳太郎、さらにテレビドラマ「水戸黄門」の格さんでおなじみの伊吹吾郎、「夜明けの停車場」などのヒット曲もある石橋正次、NHK連続テレビ小説「いちばん星」に主演した五大路子も新国劇に在団していた。

 
 若林豪が新国劇に入団したのは65年だが、68年にはTBS系の時代劇「顎十郎捕物帳」の主役に抜擢されている。久生十蘭原作の時代劇で、脚本には向田邦子も参加、演出は久世光彦だった。共演には大原麗子、志村喬、冨士眞奈美、そして劇団の大先輩島田正吾らが顔をそろえた。月曜夜8時枠の放送で、後に「水戸黄門」や「大岡越前」が放送された枠だ。68年7月12日号の「週刊TVガイド」では共演の大原麗子と一緒に表紙を飾っている。色気のある表情が印象的だった。

 続く69年にはフジテレビ系で放送された時代劇「花のお江戸のすごい奴」に主演している。野川由美子のほか、島田、辰巳の両御大も出演していた。テレビ時代劇の有望株だったと思える。
 そして70年には初めての現代劇で日本テレビ系のアクションドラマ「ゴールドアイ」に出演する。このドラマには渡瀬恒彦、藤岡弘(現・藤岡弘、)も途中からレギュラーに加わっている。柴俊夫も本名の柴本俊夫の名で出演していた。ここから、「ターゲットメン」、「燃える兄弟」などを経て「Gメン’75」へとつながっていく。


Page: 1 2

comoleva