プロマイドで綴るわが心の昭和アイドル&スター
企画協力・写真提供:マルベル堂
大スター、名俳優ということで語られることがない人たちかもしれないが、
青春の日々に密かに胸をこがし、心をときめかせた私だけのアイドルやスターたちがいる。
今でも当時の映画を観たり、歌声を聴くと、憧れの俳優や歌手たちの面影が浮かび、懐かしい青春の日々がよみがえる。
プロマイドの中で永遠に輝き続ける昭和の〝わが青春のアイドル〟たちよ、今ひとたび。
※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。
改めてプロマイド写真を見ると、やはり中山仁はカッコいい二枚目だ。1967年(昭和42年)の主演映画『囁きのジョー』の頃だろうか。中山仁の役は〝殺し屋ジョー〟。25歳である。シャープで、甘さと危うさが同居し、魅力的だ。監督はショーケンこと萩原健一の魅力を映画『約束』で引き出した斎藤耕一だった。そういえば、中山仁も汽車で護送されるやくざ風の男の役で出演していた。『囁きのジョー』はまずポスターに惹かれた。拳銃を前に、脚を投げ出し床に座る黒いスーツの中山仁。世間の常識に何かしらの違和感を抱いているようなニヒルなハンサムだ。このポスターをはじめ、流れるジャズ、衣裳、登場人物たちすべてが陳腐な表現かもしれないが〝ファッショナブル〟だった。
昭和の青春を過ごした人にとって、中山仁と言えばテレビドラマ「サインはⅤ」の鬼監督牧圭介役だろう。放送当時の1969年ごろ、オリンピックの余熱が生んだスポーツ根性ドラマ、いわゆる〝スポ根〟は大ブームで、「アタックNO.1」「巨人の星」などのアニメはもとより、「柔道一直線」「金メダルへのターン」なども大人気だった。「サインはV」は漫画雑誌「少女フレンド」連載の人気漫画の実写化で、東京オリンピックで金メダルに輝いた〝東洋の魔女〟たちを意識した女子バレーボールの世界を描いている。当時「青春とは何だ」など青春ドラマの女子高生役に欠かせない岡田可愛が主役の朝丘ユミを演じていた。范文雀(はん ぶんじゃく)演じる骨肉腫で死ぬ悲劇の混血少女ジュン・サンダースとユミが編み出した秘技〝X攻撃〟や〝いなずま落とし〟などは大いに流行った。范文雀は一躍人気女優になった。閑話休題、中山仁が演じた鬼監督の牧圭介は、ハンサムなモテモテコーチの代名詞になるほど役名は浸透した。中山自身、後に「サインはⅤでメディアの力の凄さを知った」と語っているほどのブームを巻き起こしていた。70年には映画化もされている。
映画、テレビだけではなく、68年に三島由紀夫主宰の「浪曼劇場」創立に参加し数多くの舞台作品にも名を刻まれる舞台人でもあった。『朱雀家の滅亡』『双頭の鷲』『薔薇と海賊』などから新派や地人会などの公演にも出演していた。映画作品では倍賞千恵子と共演した山田洋次監督『愛の讃歌』(67年)を、やっと4年前に観ることができた。南米の新天地に憧れるも夢破れて故郷に戻ってくる島の青年を演じていたが、そのとき、〝殺し屋ジョー〟もラストでブラジルに思いを馳せたことを思い出した。岩下志麻との共演映画『宴』と『日も月も』を観てみたい。テレビドラマなどで見せる、ハンサムながらどこか朴訥としたどぼけた味わいもまた、この俳優の魅力だったと思う。
文:渋村 徹(フリーエディター)
マルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。本年は創業100年記念のアニバーサリーイヤーに当たる。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。
マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F
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