24.06.04 update

『正欲』で日本映画批評家大賞・助演女優賞受賞の新垣結衣が不器用な小説家を演じ、早瀬憩演じる姪との同居生活を描いたヒューマンドラマ『違国日記』

『正欲』で今までに見せたことのない表情や佇まいで難しい役を演じ、第33日本映画批評家大賞の助演女優賞を受賞した新垣結衣が本作では少女小説家を演じる。勢いで引き取った姪と暮らすうちに、お互いが少しずつ変わっていく。そんな二人の関係を描いた『違国日記』が6月7日(金)より公開となる。

 本作は、累計180万部を突破し、「マンガ大賞2019」で第4位、「このマンガがすごい!2024」オンナ編第5位など多くの賞を受賞した作品を実写映画化したもの。新垣結衣が演じる小説家・高代槙生は、不器用で人付き合いが下手。部屋の片付けも料理も決してうまい方ではない。ひたすらパソコンの画面に向かい格闘する毎日だ。姉の美里(中村優子)とは小さい頃から折り合いが悪く、大人になっても交流がなかった。そんな姉夫婦が、娘の田汲朝(早瀬憩)の目の前で交通事故に遭い、あっけなく亡くなってしまう。葬式の会場では、親戚縁者たちの冷たい言葉が耳に入ってくる。朝に槙生は、「あなたを愛せるかどうかはわからない。でも私は決してあなたを踏みにじらない」と言い放つ。そんな槙生に朝はついていくことを決める。

 料理上手できれい好き、手際のいい母とは明らかに違う。朝にとっては初めて見るタイプの大人の女性だった。当然のことながら戸惑いの毎日だ。槙生も朝も〝違国〟に入ってしまったわけだ。

 かつて恋人だった笠町信吾(瀬戸康史)は、包容力のある優しさで槙生を支え、本人以上に槙生を理解してくれる中学時代からの親友の醍醐奈々(夏帆)は二人を気遣い、朝ともすぐ打ち解ける。そんな槙生の人間関係を朝は興味津々でみている。

 後日、朝の両親の遺品整理に行き、ふとしたことから口論になると、姉の美里に嫌悪感を抱いていた槙生の言葉に、朝の不満が爆発してしまう。ギクシャクしていた二人を見た母親の京子(銀紛蝶)は安心し、遺品として届いた美里の日記を槙生に手渡すのだった……。

 朝は中学卒業から新しく高校生活が始まる多感な年頃だ。けれども素直で明るく、ある時は槙生の保護者のような大人びたところがある少女だ。突発的に保護者になった槙生だったが、家族とも友人とも違うかけがえのない朝との同居生活を続けるうちに徐々に変わっていく。そんな成長の過程を新垣がきりりと演じ、朝の揺れ動く心情を早瀬が瑞々しく演じた。後半の海辺の槙生と朝のシーンが眩しいほど美しい。

 監督・脚本・編集は、『PARKS パークス』(17)、『ジオラマボーイ・パノラマガール』(20)、『HOMESTAY』(22)。ドラマでは「セトウツミ」(17)、「声ガール!」(18 )、「カレーの唄。」(20)、「あのコの夢をみたんです。」(20)などを手がけた瀬田なつきが務める。

違国日記
6月7日(金)より全国ロードショー
(C)2024ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会
配給 :東京テアトル ショウゲート
キャスト:新垣結衣、早瀬憩、夏帆、瀬戸康

映画は死なず

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