在宅医として2500人以上の看取りを経験してきた医師で作家の長尾和宏による同名小説が原作の映画『安楽死特区』は、今から数年後、欧米に倣って安楽死法案が可決した日本が舞台。それでも反対の声が多いため、国は実験的に「安楽死特区」を設置することを決める。国家主導で導入された制度のもと、人間の尊厳、生と死、そして愛を問う社会派ドラマだ。
監督は『夜明けまでのバス停で』『「桐島です」』の高橋伴明、脚本は『野獣死すべし』『一度も撃ってません』の丸山昇一で、本作で映画ファン待望の初タッグが実現した。主人公は、回復の見込みがない難病を患い、余命半年と宣告されたラッパーの酒匂章太郎と、彼のパートナーでネット記者の藤岡歩のカップル。安楽死法に反対のふたりは、特区の実態を内部から告発することを目的に、国家戦略特区「安楽死特区」への入居を決意するが、入居者たちの多様な境遇と苦悩、医師たちとの対話を通じて、心に微細な変化が訪れる。最期のときを迎える患者と愛する人たち、その選択を支える医師。制度と人間、理想と現実の狭間で揺れ動く人々の姿をそれぞれの視点で見つめた群像劇。その重い問いかけには、観る者の心をも揺れさせる。章太郎役を毎熊克哉が、パートナーの歩役を大西礼芳がW主演で務める。