第11回 会社を俯瞰で見る社長の立場だからこそ見えてきた攻めの姿勢

 実際に設備投資を実施したのは、岡田裕介の死後だった。設備投資の前提にあるのは、いい映画を作るということである。いい作品を作れば多くの観客に劇場に足を運んでもらえると確信している。

 たとえば、3億円で映画を作って赤字を作るよりも、俳優をはじめ、セット、シナリオなどいろんな部分でもう少し膨らませたら、もっと大きな作品になるのではないかということがある。3億円で作れる映画があったとしたら、そこに1億円なり上乗せしてもっと画の大きい映画を作ったほうがいいのじゃないかということである。主役だけでなく脇の役にも、すばらしい俳優たちを集めると、じゃあ、セットももっといいものを作ろうということになり、金はかかるが、大きな画ができあがる。そういう方向に向かいたいと思っている。 

 だから、今みんなに提案しているのは、年間2本、東撮、京撮で1本ずつテントポールとなる映画を作ったらどうだろう、作りましょうということである。もちろん、金をかけても失敗することもある。映画というものは、最初からテレビや配信などとは違う映画としての存在感を出すために、これだけの金をかけるというのではなく、いい作品を作った結果として金がかかったということである。

 本年1月に公開して、現在も公開中の東映創立70周年記念作品として製作した『レジェンド&バタフライ』は、その考えを具現化して製作した映画だと言っていいだろう。木村拓哉、綾瀬はるかをはじめとするすばらしい俳優たち、それに演出、脚本、撮影、セットなど大友啓史監督をはじめとしたスタッフたちによる魂の仕事により、映画らしいスケールの大きな作品に仕上がった。おかげさまで、400以上のスクリーンで上映され、多くの観客の方たちが劇場に足を運んでくださっている。やはり公開中の『シン・仮面ライダー』しかりである。大ヒットしている様子を見るにつけ、やはり東映は映画製作の会社だということを、いまさらながら実感している。

▲仮面ライダー生誕50周年企画作品として2023年3月に公開された『シン・仮面ライダー』。監督・脚本は、映画『シン・ゴジラ』でもメガホンを取った庵野秀明。本作は、「仮面ライダー」シリーズのリブート作品で、現代を舞台に、1971年に放送されたテレビシリーズ「仮面ライダー」や、石ノ森章太郎の原作漫画「仮面ライダー」を参照しながら、新たな物語が描かれている。仮面ライダーこと本郷猛には池松壮亮、仮面ライダー第2号の一文字隼人には柄本佑という、意表をついたキャスティング。そして緑川ルリ子には浜辺美波と、令和の映画ならではの組み合わせとなっている。その他にも、西野七瀬、本郷奏多、塚本晋也、手塚とおる、松尾スズキ、森山未來と魅力的な役者がそろった。さらに、仲村トオル、安田顕、市川実日子、竹野内豊、斎藤工、長澤まさみと豪華なキャストに松坂桃李、大森南朋は声の出演と、贅沢である。テレビのそれぞれの時代に「仮面ライダー」に夢中になったファンたちにとって、語られずにはいられない映画であろう。
©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

 

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