社長になって、何事もなく退任できれば、それに越したことはない。平穏無事に任務を務め上げることができれば一番いいなと思うが、いろいろと考えなければいけないことはでてくる。会社を維持するためにはと、さまざまな考えが浮かんでくるわけで。そんな中で、悩んだことと言えば、今後の東映映画の路線をどうしようかということだったかもしれない。やはり、東映というのは映画で食っているわけだから。そこで見えてきたのは、路線以前の問題だった。以前のように路線を創る能力がないのだ。そうすると、限られた資源をどのように運営していくかということを考える。シネコンを造るというのも一つだろうし、撮影所をテコ入れするというのも一つだし、プロデューサーを育てるというのも一つである。そんな考えを突き詰めると、やはり、東映は製作の会社というところに行きつく。唯一戦えるのは製作会社としての東映を進化させることだと思う。そこに気づいて、そこに向かっていかないと、東映は残っていけないし、みんな食べていけない。
映画のチケットをみなさんに買っていただくというのは、映画会社のセールスとして当たり前の事であった。昨年、『レジェンド&バタフライ』のプロモーションの際に「チケットを無理して売らなくていい、映画を売ろう」ということを決め、みんなの気持が一つになった。以前は、映画の宣伝で一番大事な時期にチケットを1枚でも多く売らねばと懸命になっていた。だが、切符を買って観に来てくれるお客様に、映画のすばらしさをしっかりと伝えることが大事なのだ、と『レジェンド&バタフライ』では作品そのものをセールスした。成功するかどうかはわからなかったが、その思いに悔いはない。結果、東宝や松竹のスクリーンでも、400スクリーン以上で本編は上映され、大ヒットした。
8月11日には映画『リボルバー・リリー』が公開される。長浦京原作の、行定勲監督による、女性が主人公のアクション大作であり、是非、映画館で観てほしい作品に仕上がっている。
果たして、観客のみなさんがどんな思いでこの映画を観てくださるのかが楽しみである。