シリーズ全十作で必ず歌われるのはディズニー・ソング「ビビディ・バビディ・ブー」で、まさに主題歌と言ってよいほどの扱い。最終作では、母親(清川虹子:映画では〝フネ〟の名前は出てこない)と、いちょう並木沿いで今も営業を続ける老舗クリーニング店「アート商会」前を歩くシーンが見られる。
チエミは、三人娘が揃って出演した最後の作品『ひばり・チエミ・いづみ 三人よれば』(64年/杉江敏男監督)で、小田急線南側の桜並木通り(註1)を夏木陽介が運転するジープで通りかかる他、単独出演作『初恋チャッチャ娘』(56年/青柳信雄監督)では、東宝撮影所脇の崖上にある家に司葉子、杉葉子の妹たちと住み、家の前の坂道を歩く姿が何度か確認できる。
なお、美空ひばりが単独で成城の街を歩く映画は今のところ発見されていない。ただし、上記『三人よれば』では三人娘揃って、(成城と思われる)桜並木にある家を訪ねるシーンが見られる。その周囲の住宅や道路の特徴は、まさしく成城のものだが、実は移転当初の成城学園が父母向けに土地を分譲した地区には、現在の砧八丁目の一角も含まれている。ただ、この家がどちらにあったかは今のところ決め手がなく、残念ながら断定することができない。
さらに、雪村いづみも新東宝映画『乾杯!女学生』(54年/井上梅次監督)で井上大助と共に成城の駅前通りに姿を見せたくらいで、桜並木に現れた形跡はなし。三人娘の成城ロケについては、さらなる検証の要がある。
ひばりやチエミと親しかったのが、P.C.L.時代に子役として活躍した中村メイコである。長らく成城に住んだメイコさんの出演作には『御用聞き物語』正続篇(57年/丸林久信監督)という東宝映画があるが、本作で可愛らしいメイコさんが小林桂樹と共に自転車で御用聞きをして回るのは、駅前商店街と成城で最も道幅の広い「成城六間通り」。もちろん桜並木通りにあった住宅も回っているのだろうが、本作ではやたら駅前付近を走るメイコさんの姿が捉えられている。