第15回 【私を映画に連れてって!】史上初!映画とドラマ同時公開の『アナザヘヴン』と、フジテレビにいた立場ながら制作をまかされたテレビ朝日の連ドラ「スカイハイ」。映画とは?ドラマとは?

 テレビドラマであり、ヒロインに求めるヴィジュアルとは……。一つの映画が浮かんだ。ちょっと前に観た『修羅雪姫』(2001/佐藤信介)だ。今は映画『キングダム』シリーズのヒットメーカーの監督だが、当時、1,2度会っていた。主演は釈由美子。僕の印象でもテレビのバラエティ番組のイメージが強かったが、『修羅雪姫』の感じならいける。会ったことはなかったが、すぐにアミューズに来てもらった。会った瞬間「イケル」と。彼女のキャスティングには周りで賛否の声もあったが、自分では納得していた。

 時間との戦いでもあるのだが、テレビ局にいたせいで、ドラマの修羅場はよく見聞きしていた。1話目の撮影時に2話目の脚本が完成していないので、スタッフの準備もままならず、俳優も2話目の自分のキャラクターや存在が読めないことは日常茶飯事だった。撮影当日の朝、シナリオが完成することも。

 そこまでは追い詰められていなかったが、主演が決まらないと始められないことも多い。アミューズに所属していたので、本当はそこから主演が理想、とも考えていたが、毎回のゲスト主演的なキャストにアミューズから多く参加してもらった。音楽はアミューズ勢で、オープニングをポルノグラフィティ、エンディングをWyolicaに創ってもらった。

▲主人公イズコが番人を務める「怨みの門」のセット・デザインには、制作に関わったすべての人たちのこだわりが結集されている。

 

 映画テイストもちょっと意識しながら、東映の大泉撮影所でセットを組み、美術の花谷秀文さんらスタッフが本当にクリエイティブな仕事をしてくれた。

 高橋ツトムさんの原作は内容が深い。死生観に関する哲学書のような漫画だ。『スカイハイ』以外にも『地雷針』『鉄腕ガール』など哲学を漫画にしたような傑作だらけだ。だから映像化は難しいと言える。観念を映像化するようなことで、作り手の技量が問われる。

 ただ、今回は連ドラである。しかも映画なら多くの創作面を監督に委ねるわけだが、連ドラは、プロデューサーの狙いやコンセプトが必要になってくる。なぜなら全話に関わるからだ。監督(ディレクター)は複数なので、プロデューサーが全体の指針役である。

 脚本家が頑張って書いてくれ、何とか2%の前枠から5%にはなるような気がした。ただ、夜11時15分スタートのハンディはある。世帯視聴率は23時を過ぎるとガクンと落ちる。2桁を狙うにはプラスαが必要なのだが、自分はドラマの専門家ではない。

▲テレビドラマ「スカイハイ」で主役のイズコを演じた釈由美子の決めポースも話題になり、流行語らしきムーブメントも見られた。2004年には好評につき「スカイハイ2」も制作された。民放ドラマに出るのであればフジかTBS、よほどの事情があれば日本テレビで、テレビ朝日のドラマに出るのは都落ちと言われていた当時、主役に決まった釈由美子には28人目にして出会った。当時、フジテレビに出演が叶わなかった女優たち、たとえば米倉涼子らがテレビ朝日系のドラマでめざましい活躍を見せ、今やテレビ朝日は、昨年も視聴率三冠王という躍進ぶりである。当時のフジの驕りが現在のフジテレビの低迷ぶりにつながり、それは21世紀になり始まっていたと筆者は述懐する。

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