また、ファッションではないが、「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」での前奏、間奏で使われたグリーグの『ペール・ギュント』の第1組曲「山の魔王の宮殿にて」も、ジュリーの楽曲だと完全にロックだった。紅白歌合戦、夜のヒットスタジオ、ザ・ベストテンなど、テレビでジュリーが歌唱するたび、大きな話題となった。ジュリー=沢田研二は特別区にいるミュージシャンだ。
沢田研二は自身が楽曲の主人公となり物語を紡ぐが、その表現力や存在感は俳優としても数多くの作品で発揮された。天草四郎時貞を演じた深作欣二監督『魔界転生』、山田洋次監督『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』『キネマの神様』、森田芳光監督『ときめきに死す』、鈴木清順監督『カポネ大いに泣く』『夢二』、毎日映画コンクール男優主演賞、キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞を受賞した中江裕司監督『土を喰らう十二ヵ月』などの映画作品。
梶芽衣子と共演した山田太一脚本「同棲時代」、久世光彦プロデューサーの「悪魔のようなあいつ」、向田邦子脚本、久世演出で光源氏を演じた「源氏物語」。夏目雅子共演「陽のあたる場所」、NHK大河ドラマ「山河燃ゆ」「琉球の風」、NHK連続テレビ小説「はね駒」「オードリー」、脚本の中島丈博が向田邦子を受賞した「幸福な市民」、大石静脚本「ふたつの愛」などのテレビドラマ。
舞台でも、ほぼ一人芝居でニーノ・ロータ、サルバドール・ダリ、ウィリアム・シェイクスピア、エディット・ピアフ、バスター・キートン、エルヴィス・プレスリー、花菱アチャコなどを演じた音楽劇ACTシリーズ(演出:加藤直)、蜷川幸雄演出、浅丘ルリ子共演『貧民倶楽部』、串田和美台本・演出、吉田日出子や笹野高史ら自由劇場のメンバーと共演した『阿呆劇 三文オペラ』、川上弘美の小説を舞台化した久世光彦演出『センセイの鞄』、マキノノゾミ演出『新・センセイの鞄』など意欲的に出演している。
なかでも忘れられないのが菅原文太と共演した79年の映画『太陽を盗んだ男』だ。沢田研二は本作で報知映画賞主演男優賞を受賞した。監督は、本年1月31日に亡くなった『青春の殺人者』でも知られる長谷川和彦氏。沢田主演のドラマ「悪魔のようなあいつ」でも脚本を担当している。長谷川監督は沢田を「無理なことでも必ずやり通す男」と評している。この映画でのジュリーを今一度大きなスクリーンで観て、長谷川監督の言葉をかみしめてみたい。
今、この原稿を書いているバックでは繰り返し「勝手にしやがれ」のジュリーの歌声が流れている。この曲はジュリーが歌謡界の頂点に立ったことを認められた曲であり、ぼくにとって、ジュリーを歌が上手いミュージシャンだと認識するようになった曲でもあった。この項で挙げたジュリーの曲をオールナイトで聴き続けたい。ジュリーの歌声は、そんな媚薬を聴く者にふりまいてくれる。
文=渋村 徹 イラスト=山﨑杉夫