川本三郎さんの「かき氷」を読んで
青森市で少年時代を過ごした私は、小学校2年くらいの頃のかき氷の思い出があります。近所にあった普段は焼そば屋だった店は、夏になるとかき氷を出します。もちろん川本氏がいうように、子供にはご馳走だったのです。ところが私は、銀の匙でかき混ぜていたときに勢いあまって、器をひっくり返してしまったのです。
食べる前に全部こぼしてしまった私は、口惜しい気持ちから泣きたい気分でいっぱいでした。もちろんもう一つ注文するお金はもっているはずもない私は途方に暮れていました。
そのとき、違う席に座っていた見ず知らずの中学生のお姉さんが、私のために一杯注文してくれたのです。当然こども心に申し入れを固辞したのですが、やっぱり食べたい心には勝てず、食べてしまいました。ただ食べている間は、肩身の狭い思いと、中学生のお姉さんの優しさを感じる、苦い思い出です。








