新・日日是好日

文=帯津良一

節分会豆蒔きの日に

お不動さまが点してくれた希望の灯火

 

  今年も成田山川越別院の節分豆蒔きの日がやって来た。2月3日、50人ほどの上下姿の年男たちが境内に設えられた舞台の上から、
「福は内、鬼は外」
  と唱えながら周囲に集まった大勢の善男善女に向かって豆を蒔くのである。

  郷里の川越に病院を開いたのが1982年。それから数年は同郷のよしみということで、年男の役をお引き受けしたものだが、生来の照れ性。上下姿で人前に立つことが苦痛になって、いつの間にか年男の役を下りてしまったのである。

  ところが昨年、久しぶりにお声がかかり、自分でもおどろくほどの素直さでこれに応じてしまったのである。年齢の然らしむるところか。一連の儀式が済んで、最後に年男だけの懇親会。そこで一言ご挨拶する破目に。

  ――じつは私は生まれも育ちもこの近くなのです。物心がついたころからお不動さんに親しんで来ました。とはいっても太平洋戦争の終戦が小学校4年生のときですから、それ以降ということになりますが、毎 月一回の縁日の宵には弟と二人、親に連れられてお参りに行ったものです。境内に出ている夜店で根付を買ってもらったり、帰路に近くの福田屋書店に立ち寄るのが何よりの楽しみだったのです。
  時代も良かったのです。大戦の傷跡もようやく癒えて、老いも若きも人々の胸に希望の灯火が点りはじめた、そんな時代だったのです。縁日の宵の街の灯火はそのまま、人々の胸に宿る希望の灯火だったのです。 だから、こうしてお不動さまをお参りしていると当時の世相が蘇って来て、お不動さまに思わず手を合わせ たくなるのです。本日はありがとうございました。――

……続きはVol.39をご覧ください。

おびつ りょういち

帯津三敬病院名誉院長。日本ホリスティック医学協会名誉会長。1936年埼玉県生まれ。61年東京大学医学 部卒業。東京大学医学部第 三外科医局長、都立駒込病 院外科医長などを経て、82 年帯津三敬病院を開設し院長。西洋医学だけでなく、中国医学、ホメオパシー、代替医療など様々な療法を駆使してがん診療に立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学の確立を目指している。 新刊は『はつらつと老いる力』(KKばっすとせらーず)など。講演会、養生塾などの開催については、 http://www.obitsusankei.or.jp/ をご覧ください。

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