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新作舞台『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote 』で作&演出のKERAのイメージを具現化してみせる俳優・大倉孝二の仕事


 作・演出家のKERAと俳優・大倉孝二との間にはどのような関係性が成り立っているのだろうか。


 「KERAさんとはみなまで話さないという関係性が何十年も続いているので、実際やっていて、何故KERAさんがぼくにこれをやらせようと思ったのかを知らないまま終わるということもありますし、それでいいと思っているところもあって。KERAさんが、これ大倉がやったらいいんじゃないかとなんとなく思ったのかなと推測することしかできないですね。
 KERAさんがぼく自身でも気がつかなかった俳優・大倉孝二を引き出してくれたなと思うことはたくさんあります。作品ごとに、いつもぼくに何かを課すということはしてくれていると思うんですよ。マンネリにならないようにとか、お互いに緊張感のある関係性を保つためにも。ぼくだけではありませんが、ぼくらが出来なさそうなこと、あるいはこういうことが出来たらいいんじゃないかと、そういうことを常に与えてくれているとは思うんですよね。だから、それがクリアできているのであれば、少しずついろんなことが出来るようになってきているのかもしれないです。
 たとえば100パーセント観客に伝わらなくても、KERAさんは面白いと思っているんだということをぼくも理解できていて、互いのそんな思いを共有して形に出来たとしたらそれは楽しいことかもしれないですね」

 
 
 大倉の言葉から浮かび上がる、30年間のつきあいだからこそ成立する二人の濃密な関係性のなかから、果たしてどんなドン・キホーテが誕生するのか想像するだけでも愉快になってくる。KERAは今回、大倉に何を課し、大倉はKERAにどう応えるのか。


 「ドン・キホーテはぼくと同じ50歳なんですが、KERAさんは、もっとおじいさんだと思っていたようで、年配の俳優さんに依頼しようと思ったらしいですよ。ただ、これをぼくが20代とか30代でやることになっていたら、全然違うものになっていたんでしょうね。ぼく自身、明らかに老いを感じながら生きている状態なので、だから今ぼくがやっていいんじゃないかと思える芝居になればいいなと思っています。
 作品の色合いやトーンというものは、それはやはり作家にまかせることだと思うので、どんなドン・キホーテになればいいなとぼくが思うことはないですね。KERAさんが言っているのを聞きかじったことですが、小説のドン・キホーテをストレートに戯曲にするものではない、小説とオリジナルの部分を行ったり来たりするようなものになるとは言っていました。ただ、いかんせんまだ台本が出来上がっていないので。まあ、書き始めてもKERAさんは途中で気が変わることはよくあるので、どうなるかはわかりません」

 
 ドン・キホーテの供をするサンチョ・パンサ、空想上のドルシネア姫といった原作から引き継がれるキャラクターたちと、新たに描かれるドン・キホーテを取り巻く登場人物たちによる群像劇が、咲妃みゆ、山西惇、音尾琢真、矢崎広、須賀健太、安井順平、菅原永二、犬山イヌコ、緒川たまき、高橋惠子らの魅力的な俳優陣と生演奏を交えて紡がれる。

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