第10回【私を映画に連れてって!】 小林武史、三上博史、山口智子、種田陽平……映画『スワロウテイル』のすばらしき仲間たち。そして僕はフジテレビを離れる覚悟ができた

 プロデューサーとして最も大事で、ハードルが高かったのが製作資金だった。1億円台の『LoveLetter』と違い『スワロウテイル』は4~5億円を想定していた。

 東宝系で公開されたミスチルの映画はそんなにヒットにはならなかったが、ビデオ(VHS)が18万本売れ、此方は大ヒットになった。製作費も回収でき、2~3億円の利益が出た。出資した事務所である烏龍舎・小林武史社長に『スワロウテイル』の資金の話をすると喜んで出資してくれると言う。結局『スワロウテイル』に最も多くお金を出してくれたのは烏龍舎、というか小林武史さんになった。しかも、全ての音楽(新曲&劇伴)は彼が創ってくれた。

 編成部に在籍していたが、ある程度製作費の目途も出来、あとはフジテレビの判断だ。もちろんフジの編成部員のまま映画を製作することは不可能であろう。36歳、生まれて初めて、「辞職願」なるものを書いてみた。ただ、書き方がわからず、なぜ自分がこの映画を創らねばならないかを訴えようとして、10枚以上の大作になり、出すのは躊躇していた。

 フジテレビとしての判断は、意外で、とても有り難いものだった。僕の中では、会社を辞めてでも……と考えていただけに。

「5億円の費用をかけてゴールデンタイムで放送不可能なフジテレビの映画製作は無い」

 御尤もである。これまでメジャーで公開する映画は、僕は必ずゴールデンタイムで15%の視聴率が獲れるように作ってきた。『病院へ行こう』でも『七人のおたく』でも。『スワロウテイル』はシナリオの段階で、いくら視聴率1位のフジテレビでも二桁の数字は難しく7~8%だろうと予想できた。

▲『スワロウテイル』関連の書籍も発売され、映画と前後してメガホンをとった岩井俊二による同名の小説も発表された。

 

 1995年夏。編成部にいた自分が月曜9時の連続ドラマ枠で企画を担当することになった。これは前に『病は気から 病院へ行こう2』に主演してもらった小泉今日子さんからのリクエストもありという経緯だった。10月放送スタートの「まだ恋は始まらない」(脚本:岡田惠和)というドラマで、これに関わると年内はこれに時間を費やすことになる。

 9月初旬のフジテレビでのホン読み(全員でのリハーサル)の時に、キョンキョンからまさかの「ホントは映画を一緒に……」の一言。自分が考えていた企画が大きく変更になり、〝月9〟的な展開ストーリーに。後に結果、20%の視聴率を獲るので「さすが!」と思った半面、その時は、キョンキョンに話したストーリーと全然違うものになり、申し訳ない気持ちだった。

▲映画のポスターもいくつも作られたが、三上博史をはじめとするスター俳優を前面に押し出すことはなかった。主演の3人のほか、江口洋介、渡部篤郎、大塚寧々、洞口依子、田口トモロヲ、鈴木慶一、塩見三省、山口智子、ミッキー・カーチス、桃井かおりらも出演している。胸に蝶のタトゥを彫り美しい歌を歌う娼婦グリコを演じたCHARAと、グリコに引き取られアゲハと名付けられる少女を演じた伊藤歩は、高崎映画祭で、それぞれ最優秀主演女優賞、最優秀新人女優賞に輝いた。岩井俊二も最優秀監督賞を受賞している。

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