鉄郎は、母の面差しを強く意識しながら、メーテルと銀河へと渡る「999号」で長い旅に出立する。
銀河鉄道の停車駅での停車時間は、駅ごとに異なる。999号が停車する星の自転の速度により、日昇から日没までが10時間であったり30時間であったりする。
停車駅で降りると、鉄郎はしょっちゅうトラブルに巻き込まれ、出発時刻に遅れて星に取り残されそうになる。なによりも大切な「無期限パス」をなくしたり、奪われそうになったりする。男気をふるって勇ましくあろうとするあまり、たびたび窮地に陥る鉄郎を、メーテルは一身にかけて見守りつづける。
少年画報社文庫版『銀河鉄道999』第1巻の終わりに、松本零士は綴っている。
〈僕は残された時間――人間の〝限りある命〟の尊さを描こうと思いました。人間の生命の何とはかなく短いことか――〉
同時に、残る時間が限られているからこそ、人は努力をするはずであると、星野鉄郎を通して描かんとしたとつづけている。
不老不死の無限の生命を得たとして、その先に何があるのか。『銀河鉄道999』で描いた〈機械化人間〉の行き着くところは何なのか、と自問自答するように投げかけながら、〈努力しない者に報いはあり得ません〉とも断じている。
星野鉄郎は、松本零士の出世作となった『男おいどん』の主人公・大山昇太をどことなく思い起こさせ、ひいては作者自身の青少年期を想像させる。
精緻な「銀河鉄道999号」の描写は、松本零士のいう〈何よりも好きなメカニズム〉として結実し、『宇宙戦艦ヤマト』や『宇宙海賊キャプテンハーロック』のそれへと発展してゆく。