連載

第37回【キジュを超えて】タネとネタ─萩原 朔美の日々

—老体からは逃げられない。でも笑い飛ばすことは出来る—

萩原 朔美さんは1946年生まれ、2024年11月14日で78歳、紛れもなく喜寿を超えているのである。本誌「スマホ散歩」でお馴染みだが、歴としたアーチストであり、映像作家であり、演出家であり、学校の先生もやり、前橋文学館の特別館長であり、時として俳優にもなるエッセイストなのである。多能にして多才のサクミさんの喜寿からの日常をご報告いただく、連載エッセイ。同輩たちよ、ぼーッとしちゃいられません! 

連載 第37回 キジュを超えて


毎年、季節になると道端に大量の実が散乱しているのを目撃する。

山の家は、今年どんぐりと栗が見たことの無い量、落下していた。

前橋では、ギンナンが凄かった。


歩道を埋め尽くすから、匂いもきつい。拾って持ち帰りたいけど、処理の方法が分からないので、残念でならない。

世田谷の公園は、梅が沢山落ちていた。

ふと、思った。樹がなにか危機感を感じて、子孫を残す為に大量の種子を地上に撒いているのでは無いか。そんな感想が浮かぶのは、夏が長かったからだろう。やはり、気候の変化を一番敏感に受け止めているのが樹木かも知れないのだ。

老人は、危機感を感じたら、どんな種子を撒けばいいのだろうか。

来る日も来る日も……

タネの反対はネタだ。(笑)話しのネタをばら撒くことぐらいしかないかもだ。(笑)


第36回 行き止まりはない
第35回 ひとりカフェの愉悦
第34回 オブジェは語る
第33回 まだまだ学べ
第32回 命のデータ
第31回 目の奥底
第30回 老いも若きも桜の樹
第29回 僻んではいません
第28回 私の年齢観測
第27回 あゝ忘却の彼方よ
第26回 喜寿を過ぎて
第25回 生前葬でお披露目する「詩」
第24回 我を唱えず、我を行う
第23回 老いは戯れるもの
第22回 引きこもりの愉しみ
第21回 楽しい会議は老化を防ぐ


はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の特別館長、金沢美術工芸大学客員名誉教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。



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