—老体からは逃げられない。でも笑い飛ばすことは出来る—
萩原 朔美さんは1946年生まれ、2025年11月14日で79歳、紛れもなく喜寿を超えているのである。本誌「スマホ散歩」でお馴染みだが、歴としたアーチストであり、映像作家であり、演出家であり、学校の先生もやり、前橋文学館の特別館長であり、時として俳優にもなるエッセイストなのである。多能にして多才のサクミさんの喜寿からの日常をご報告いただく、連載エッセイ。同輩たちよ、ぼーッとしちゃいられません!
連載 第39回 キジュを超えて
革の小銭入れのファスナーが壊れたので、新しいものに変えようと、以前買い求めたお店に行った。

古い小銭入れを見せて、これより少し大きめのはありますか。と聞くと、なんと革の小銭入れは、もう新製品は無いという。何でも、革職人が引退して後継者も居ないのだそうだ。原因は、革製品の激減だそうだ。ランドセルも靴もカバンも革では無いものが主流になっているという。先日、竹製品の専門店が閉店したというニュースを見たばかり。革製品の専門店も危機を迎えるかも知れない。そう思って、無理矢理財布を2つ買ってしまった。
翻って、自分は職人として何か伝承すべき技のようなものがあるだろうか。幾ら考えても当然なにもない。(笑)
しかし、と思った。老体を騙し騙しラジオ体操やったり、散歩したり、役者やったりするのも、技ではないだろうか。そう考えれば、生きてしゃべっている事は、伝承行為みたいなもの。偉い。(笑)という事で自分を誤魔化してみた。(笑)

第38回 今、会いたい人
第37回 タネとネタ
第36回 行き止まりはない
第35回 ひとりカフェの愉悦
第34回 オブジェは語る
第33回 まだまだ学べ
第32回 命のデータ
第31回 目の奥底
第30回 老いも若きも桜の樹
第29回 僻んではいません
第28回 私の年齢観測
第27回 あゝ忘却の彼方よ
第26回 喜寿を過ぎて
第25回 生前葬でお披露目する「詩」
第24回 我を唱えず、我を行う
第23回 老いは戯れるもの
第22回 引きこもりの愉しみ
第21回 楽しい会議は老化を防ぐ

はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の特別館長、金沢美術工芸大学客員名誉教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。













