北口改札を出て少し歩くと、まず秦野市計絵の日帰り温泉〈弘法の里湯〉に出合う。隣駅の伊勢原は大山詣でなどを楽しむ山ガール、山ボーイにとっては鶴巻温泉はセットなのかもしれない。2017年11月から大山と鶴巻温泉を結ぶバスの試運転の開始された。
〈弘法の里湯〉の足湯は無料で利用することができる。土産物産があり、そば屋もある。そして〈秦野市立 宮永岳彦記念美術館〉も併設されている。
宮永画伯は、〝光と影の華麗なる世界〟と称される美人画で知られる画家である。宮永の実家は秦野で、昭和21年から15年にわたり秦野市名古木のアトリエで創作活動を続けていた。
秦野ゆかりの画家・宮永は、昭和23 年から40年ころまで、「箱根」「丹沢」「江の島」など小田急沿線の観光ポスターを手がけている。宮永にはグラフィックデザイナーとしての キャリアもあった。館内には小田急関連作品を常設展示する〈小田急コーナー〉が開設されている。風景にエキゾチックな美女を配したデザインのポスターは、人々の足を止め、 旅心を大いに掻き立てたという。昭和32年に登場したロマンスカー13000形(SE)の内装、外装デザインも手がけ、メインカラーであった〝バーミリオンオレンジ〟が現在 の車両にも引き継がれている。ロマ ンスカー好きのジョーさんは食い入るように熱心に眺め、
「いやあ、温泉に入ることだけを楽しみに来て予期せぬ収穫です。すごく楽しい展示 ですね」と嬉しそうだ。宮永は「武 相旅情」「沿線案内」など特急の車 内誌の表紙画、昭和37年に誕生した 小田急百貨店の包装紙も手がけた。 秦野に住んでいた当時「小田急線には馴染みがあり、普通旅客で私ほど続けて利用しているものはないのでは」と宮永は語っていたらしい。
〔住〕秦野市鶴巻北3-1-2 〔問〕0463-78-9100 〔開館〕10:00~19:00(入館は閉館の30分前まで) 〔休〕月曜(祝日の場合はその翌日)、12月28日~1月2日 〔観覧料〕一般300円、高校生以下、障害者手帳をお持ちの方と介護 者1名は無料