22.12.16 update

ユーミン、半世紀の音楽旅

ユーミンの存在を知ったのは、1973年のラジオの深夜番組だった。
今は亡きTBSのアナウンサー林美雄がパーソナリティを務めていた
TBSの「パックインミュージック」で、荒井由実の「ひこうき雲」がかかった。
その1曲で、それまでにない新たな才能の出現を感じた。
それから、どれだけユーミンの曲を聴いてきただろう。
フォークソングブームの時代から、それまでシングル中心に聴いていたのが
LPレコード、つまりアルバムで聴くようになっていたが、
ユーミンの登場で、アルバムの楽しさが加速した。
2022年、ユーミンはデビュー50周年を迎えた。
荒井由実の時代、松任谷由実の時代問わず、
多くの人々がユーミンの曲に自身の青春を重ねてきたはずだ。
ユーミンの曲は、半世紀の間その時代を生きたその人の暦と共にいつも存在していた。
開催中の「YUMING MUSEUM(ユーミン・ミュージアム)」では、
ほとんど公開されることのなかったコレクションや貴重な資料に映像、
アルバムジャケット、ステージ衣装、直筆のメモなどが惜しげもなく紹介されている。
半世紀にわたるユーミンの音楽の旅路である。
同時に、ユーミンの歌が流れていたそれぞれの時代に生きた人の旅路でもある。

まつとうや ゆみ
1954年(昭和29年)1月19日東京都八王子市生まれ。72年、多摩美術大学在学中にシングル「返事はいらない」で旧姓・荒井由実としてデビュー。73年ファーストアルバム「ひこうき雲」をリリース。76年、アレンジャー、プロデューサーである松任谷正隆と結婚、松任谷由実になるが、荒井由実名義でリリースした初期4枚のアルバムは今も伝説的な存在となっている。呉田軽穂の名義でも多くのアーティストに楽曲を提供している。1990年に発表したアルバム「天国のドア」は、日本人アーティスト初の200万枚を超す売上げを記録した。39枚のオリジナルアルバム、400曲を超える楽曲、2000公演を超えるコンサート、雑誌、ラジオ、テレビなどのメディア出演を通し、50年間常に時代の最前線を走り続けてきた。本年10月にリリースしたデビュー50周年記念アルバム「ユーミン万歳!」は、アルバムチャートで初登場1位になった。さらに2022年は文化功労者にも選ばれた。

いつもユーミンが流れていた

文=有吉 玉青

 この原稿のご依頼には驚いた。音楽専門ではない人に、ということらしいが、それでも詳しい人はたくさんいる。私でいいのだろうか。迷った末にお引き受けすることにしたのは、ご依頼の際の「ユーミン、好きですか?」が気になったからだった。

 思えば自分がユーミンが好きなのかどうか、考えたことがない。

 私はユーミンが好きなのか?

    ユーミンをいつから知っていたのか、思い返せば中学のときから。調べたら、そのころユーミンは荒井由実から松任谷由実になっていたが、荒井由実と呼んでいたような気がする。

 高校の卒業式では、各クラスの代表が卒業証書をもらうとき、「卒業写真」を歌ったクラスがあった。まさにその時にあって、知っていた歌が心にしみた。

 学生時代、テニスのサークルの合宿に参加した折、宿のロビーに「守ってあげたい」が流れていた。BGMに背中を押されたか、あるいは力を借りたのか、隣のテーブルで男子が向かいの女子に、

「君って『守ってあげたい』っていう感じなんだよね」

 と、さりげなく告白していて、思わず聞き耳をたてた。

 文化祭でわたあめの屋台を組み立てている間、ユーミンのアルバムがかかっていた。ラジカセの時代、テープのA面が終わると、誰かが気づいてB面に裏返し、それが無限に繰り返された。

 スキーバスの中では「SURF&SNOW」……、学生時代は、ユーミンとともにあった。コンサートにも行った。さそわれて行ったこともあるし、自分でもチケットを買って行った。

 ─── ということは、好きなんじゃないか。わからない、もう少し考えてみたい。

▲1973年11月20日リリースのファーストアルバム『ひこうき雲』には、「ひこうき雲」「曇り空」「恋のスーパー・パラシューター」「空と海の輝きに向けて」「きっと言える」「ベルベット・イースター」「紙ヒコーキ」「雨の街を」「返事はいらない」「そのまま」「ひこうき雲」が収録されている。バック・バンドには細野晴臣(ベース)、松任谷正隆(キーボード)、鈴木茂(ギター)、林立夫(ドラム)という当時の日本を代表するミュージシャンで構成された。元々ユーミンは、作曲家志望だったが、高校生だったユーミンを作曲家の村井邦彦がスカウト。「ひこうき雲」も当初は他の人が歌ったが、あまりにも歌唱力がありすぎで、曲の感じが出ないためユーミンが歌うことになった。▼

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