東京国立近代文学館は1952年12月に開館し、2022年度は開館70周年にあたる。明治以降の絵画・彫刻・工芸の重要文化財のみで構成される初めての展覧会が開催される。
明治以降の作品が最初の重要文化財に指定されたのは、1955年以降。今でこそ「傑作」と呼び声の高い作品も、発表当初は新しい表現が理解されず、「問題作」と言われることもあった。そうした作品が、どのような評価を経て重要文化財に指定されるまでになったのか、美術史の秘密に迫る。
たとえば、よく知られた名作、黒田清輝の《湖畔》。箱根芦ノ湖に佇む浴衣姿の夫人を描いた涼やかなこの作品は、明治100年を記念して1957~58年に明治時代の作品がまとめて重要文化財に指定され、《湖畔》も最終候補まで残ったが漏れて、重要文化財に指定されたのは1999年(平成11)のこと。さてなぜここまで時間がかかったなのでしょう……。
高村光雲の《老猿》。本作はシカゴ万博で受賞した猿の代表作。万博では日本館の隣にロシア館があり、鷲はロシア館を暗示していると、息子の高村光太郎は回顧している。作品の老いた猿の見つめる先は、明治の日本が欧米列強と肩を並べようとしているその姿なのだろうか。
重要文化財は保護の観点から貸出や公開が限られている。本展はそれらをまとめて見ることのできる貴重な機会である。
東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」
会期:2023年3月17日(金)~5月14日(日)※会期中展示替えあり
会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
公式ウェブサイト:https://jubun2023.jp/
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
休館日:月曜日 ※ただし3月27日、5月1日、8日は開館
開館時間:9時30分~17時、金曜・土曜は20時まで(入館は閉館の30分前まで)
観覧料:一般1,800円 大学生1,200円 高校生700円