ドアスコープ

萩原朔美のスマホ散歩

散歩は、街を一冊の本のように読む事。だから、ついつい長引いてしまう。おまけに、携帯で撮影もするから散歩だか家出だか分からない。同じ場所を毎日撮る定点観測。奇異に感じた光景。同型の収集。カーブミラーに映る自分等。
面白いことに、散歩のついでだった撮影が、今では撮影するための散歩になってしまった。手段の目的化だ。これから展開する画像を見た人達が、それぞれ自分の好みで街を散歩し撮影し始めてくれたら、とても嬉しい。


第8回 2020年12月28日

 ドアの覗き穴、ドアスコープは、外出する時に必ず撮影する。ほとんど人は映らない。何年かに一度掃除している管理人さんが画面に入った。何故かワクワクした。相手は知らないのだから、盗撮している気分になってくる。裸婦が現れた訳でもないのに、デュシャンの遺作を連想してしまった。

 ドアスコープの画面は、魚眼レンズのように、世界を丸く縮小してみせる。あの鍵穴のような小さな縮小画面が秘密の世界を覗きしているような雰囲気を出す。そこが好きなのだ。絵画では、トンド形式と呼ばれる丸い画面。乱歩の、屋根裏から覗いた節穴も丸かったに違いない。

 窃視者は、几帳面な人なのだそうだ。私はだらしないから、大丈夫だろう。ただ撮影する事が好きなだけだと思う。思うのだ。思いたい。(笑)

秘密の世界を覗き見する雰囲気

photo by Gombi

はぎわら さくみ

エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだらなんでも書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長を務める。

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