21.03.29 update

「百歳現役」を信じる私が気づいたこと

私の生前整理 2017年1月1日号より


文=加藤タキ
コーディネーター

もったいない精神がついつい頭をもたげ

 いやぁ、参ったなぁ……。ムムム、私の日頃の暮らし方を〝覗かれている?〟と思ったほど、実は、この数年私が最優先しなくてはならないテーマが「生前整理ならぬ、日常の整理」。

 真面目な話、多分私は100歳でまだ現役。寿命は120歳と勝手に信じている。根拠? 特にはないけれど、長寿のDNAを継いでいることは間違いない。そういう意味では、「生前整理」には少なくとも30年の猶予があると思っている?!

 現在71歳。寝だめ、爆睡はするが平均睡眠時間は3〜4時間。50年前に仕事を始めて以来、多忙な日々を過ごす。健康だからこそと思うと、真にありがたい。

 整理をしなくては、と毎日思いつつ、気がつけばあっという間に1日ならぬ1年が過ぎ去り、ヤレヤレとうつむいた気持ちで新年を迎える。毎年その繰り返しで、いい加減、そんな自分に辟易する。

 決してモノに執着しているわけではないが、「もったいない精神」が根強く、スーパーの袋や紙袋、花束をいただいたときなどの包装紙やリボンなども大切に〝二次使用〟する。やはり、戦後モノがない時代に明治人の両親のもとに生まれ育ったことも影響しているのだろう。

 とにもかくにもモノがどんどん増える。仕事上の書類や本類はもちろんのこと、衣類もとどまることなく増え続ける。職業柄、テレビ出演や雑誌などの取材、講演、さまざまなタイプのパーティと、人さまの前に出ることが頻繁な私だが、スタイリストをつけることなく全て自前なので、どうしても衣装が増えてしまう。なにせ20〜30代の頃パリやローマなどで購入したファッション類を気に入っていて、いまだに着ている。当時のアクセサリーも大活用中。

明治の母との二代にわたる整理が私を待っている

 ひと頃すごく太った私は運動に精を出した。が、結局ジム通いに挫折。ある機会に『Shall We Dance?』に触発され、67歳半から本格的に社交ダンスを始めたら、筋肉がつき、体重・体脂肪率も大幅に減り、体型がすっかり30代に戻った。正直に言って、スリムになると装うことがより楽しくなり新しい服が目に見えて増えた。そう、またモノが増えた……。

 42歳で出産したので40代から50代前半は子育て中心の生活。息子関連の写真や、彼が創った作品、描いた絵、幼稚園の3年間ハロウィーンのときに私が徹夜して手作りした衣装など、想い出の品々がいっぱい。息子はもうすぐ30歳になるというのにまだ保存してある!

 加えて、19世紀に生まれた明治人の母の持ち物、いまでは骨董品としても価値があるだけでなく、二度と作れないような着物や帯、器類。そして戦前から国際的に社会活動をし、戦後は初の女性国会議員として28年間活躍。議員を引退した後も、104歳の天寿をまっとうするまで現役で活動していたので、貴重な資料が山ほど残っている。その母が残してくれた私が10代の頃描いた絵が出てきたのには、驚いた……。

 この原稿を書いていたら、いま夫の声がした。

「お〜い、コレ、どうにか処分してね」

 見ると、ウッヒョー、衣類が山積みされているではありませんか! あぁ、どうしよう、遂に、彼は整理に着手した。参ったなぁ……。だって、もったいなくて捨てるわけにいかないから、貰ってもらう人を探したり、私がまず仕分けをしなくてはならない。ヤレヤレ……。

 そうかぁ、この原稿は、タイミング的に〝自分との闘いを促すチャンス〟なのかもしれない。母と私、二代約120年分の整理を息子に遺すわけにはいかない。

そうだッ、「生前整理」を始めよう!

かとう たき
コーディネーター。1945年東京生まれ。米国報道誌を経てショービジネスの世界へ。オードリー・ヘップバーンをはじめ海外アーティストのCM出演交渉や音楽祭などで、国際間のコーディネーターとして先駆的な役割を果たす。現在は、講演、TV、各種委員、著述等、幅広く活動。日本初の女性国会議員のひとり、母・加藤シヅエの志を継いで、AAR Japan[難民を助ける会]の副会長を務めるなど、ボランティアにも励む。

映画は死なず

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