女流マンガ家の草分け、里中満智子さんの整理ができない悩みの種は……


どうしよう!? この本の山

文=里中満智子
漫画家

私の生前整理 2018年10月1日号より


言い聞かせ続ける
「イザとなったときは……」

 私は根が暗くて心配性なので小学生の頃から年がら年中「明日、いや今夜死んでしまうかもしれない」と自分に言い聞かせている。いくら健康でも不慮の事故もある。そして──「いつ死んでも良いように、周囲の人が困らないように片付けておかなくては」と自分に言い聞かせている。「言い聞かせている」のだ。実践しているわけではない。
 実践していないからこそ毎日のように「イザとなった時のために片付けなくては」と自分に言い聞かせている。一体何年こうして言い聞かせているのか?
 一体何が「片付かない」のか?「本」だ。
 本は捨てられない。自分の楽しみのために読む本は、年々溜まっていく。読み終えた本は「いつかまた読むかも」と思うので、捨てられない(実際に20年や30年ぶりに読むこともたまにある)。
 ごくたまーーーーに、「もう読まないだろう」と決心して処分する本もあるが……とにかく溜まる一方だ。楽しみで読む本ですらこうだから、資料として読む本は一切捨てられない。その本の中のたった一ページ、たった一行が「いつか必要となるかもしれない」のだから。
 外国に行くと「いつか描くかもしれない時代の建築物、衣服、武器、生活用品etc……」がチラッとでも載っている本があれば後先考えずに買い込む。国によっては劣悪な製本や印刷の本もあるが、それでも買う。「だって、この次は無いかもしれない、あとでやっぱり買おうと思った頃には、この国は戦場になってるかもしれないし」などと、いつもながらの心配性が頭をもたげる。だから……溜まる一方……。

開き直った私の〝最終処分法〟

 溜まればそれなりにスペースをとる。自宅の広さには限界がある。若い頃から徐々により広い家に引越しを繰り返しているので、今の所ギリギリなんとかなっているが、いつまで今の家で納まるか?さて……?
 最近はネット検索でかなりの資料をチェックできるので助かっているがそれでも「本」はどんどん増えていく。
 ── もうこのまま死ぬしか無い── 開き直っている。
 死んだら残された人が困るというのはナゼか? 残された人が「この本どうしよう」と悩むようならそれは迷惑だし困らせることになる。だから悩ませなくて済むようにキチンと伝えておけば良い。
「何も考えず業者を呼んで処分してくれ。そのための費用は残しておく」これで一件落着だ。
 頼める人物が居ない場合は弁護士に相談して遺言書をつくっておけば良い。
生前整理に費やす時間を考えれば「割り切って金で解決する」のが合理的だ。整理はできないが問題解決はできる。それで良し。

さとなか まちこ
マンガ家、1948年大阪生まれ。高校2 年時「ピアの肖像」で第1 回講談社新人漫画賞受賞、その後プロとして活躍。50余年にわたり500タイトル近くの作品を描き、子供ものから大人ものまで幅広い作品を発表。歴史を扱った作品も多く、持統天皇を主人公とした「天上の虹」は32 年かけて完結した。代表作に「あした輝く」「アリエスの乙女たち」「海のオーロラ」「あすなろ坂」「狩人の星座」「天上の虹」など多数。現在、公益社団法人日本漫画家協会理事長、一般社団法人マンガジャパン代表、NPOアジアMANGAサミット運営本部代表、大阪芸術大学キャラクター造形学科学科長等を務める。

2018年10月1日 Vol.37より
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