萩原朔美のスマホ散歩
散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第7回 2020年11月27日
どこに行っても見かけるカラーコーン。別に気にも止めずにいたのだけれど、道路の隅っこにぽつんと佇んでいたのを目撃した時、思わずシャッターを押してしまった。孤独感を漂わせている姿にエールを送りたかったのではないかと思う。(笑)
以来、何千個撮影したか分からない。撮影していると、不思議な事に愛着が湧くもので、割れていたり、薄汚くなっている様子を見かけると気の毒になってくる。(笑)
何故だか知らないけれども、赤が1番安い。需要が多いからなのだろうか。
最近特に多いのは、不動産の広告を貼り付けたものだ。カラーコーンにも社会の動きが反映されているのである。
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長を務める。