散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第42回 2023年10月20日
娘が小さい頃、動物ビスケットをテーブルに並べて眺め、それから食べ始めた事があった。片言話し始めた時だったから、ビスケットの文字で文章を書いているのではないかと思った。
散歩の途中で、ビスケットのように誰かがモノを並べている光景に出くわす事がある。その度に、一体人は何故モノを並べたくなるのだろうか、と思う。
狩猟の成果の誇示。
呪術行為。
モノを使ってリズムを刻んでいる。
造形。
ピタリ当てはまる答えが湧かない。
ぜひ、並べる行為の論考を読んでみたい。多分その論文は詩の香りがするだろう。よく言われるように、「詩的直感力」がなければ、優れた論文にはならないからだ。
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長、金沢美術工芸大学客員教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。