new 21.03.29 update

今こそ箱根ブランドに磨きをかける

文=箱根町長  勝俣浩行


まず町民の暮らしと経済を守る

 年間2000万人超の観光客を迎える箱根町ですが、2015年に大涌谷の噴火活動があり、19年には台風被害により箱根の象徴ともいえる箱根登山電車も止まってしまいました。やっと開通したかと思えば、昨年は新型コロナウイルスと苦難の連続。観光産業で成り立っている箱根町にとっては厳しい状況が続いています。

 私は生まれも育ちも箱根町。役場に入庁して43年、コロナ禍の真っ只中にあった、昨年11月に町長に就任しました。箱根の観光を何とか維持して、町民の命と事業の命の二つを何としてでも守っていくのが私の使命だと思っています。

 副町長だった昨年のコロナ禍の春、1事業所当たり最大30万円を給付する事業者支援策の他に、町民には町内で使える一人当たり1万円のクーポン券を町独自で配りました。その他にも、高校生がいる家庭や一人親世帯へは特別給付金を支給するなどできるだけ迅速に、簡略化した手続きで、住民の生活を守り、箱根の経済を町内で循環できるように動きました。

「GO TOキャンペーン」が功を奏して10月、11月には観光客が大幅に増えました。やっと一息ついたかと、町長室の窓から見えるロマンスカーが多くの人を乗せて走っているのを見ると本当に嬉しくなりました。しかし、このキャンペーンもあっという間に中止、1月には再度の緊急事態宣言で、観光客の足がまたピタっと止まってしまいました。今度は1事業所当たり最大20万円の支給、その他に雇用調整助成金を申請した企業には町から20万円の補助金の支給。3月中旬には一人1万円の町内で使えるクーポン券を再度配ります。

どこにも負けない美しい景観も「箱根ブランド」のひとつ

 箱根町の財政が豊かだと判断されているのか、国からの交付金がなかなか来ない。実情は財政調整基金を取り崩して対応している状態が続いています。それでも箱根町が立ちゆかなくなると、仕入れをしている近隣の市町村の事業所もダメージを受けてしまいます。箱根町の観光客の消費が近隣をも支えているのです。県西地域の経済に与える影響を最小限に止めるよう取り組むことも、箱根町の町長としての責務であると思っています。

ピンチをチャンスに

待ちに待った箱根登山鉄道が再開したのは2020年7月23日。復旧への難工事も町民の協力で予定より早かった。(箱根登山鉄道提供)

 今は、コロナ禍の影響で大変ですが、このピンチをチャンスに変える良い機会だとも思います。長い間先人が築いた「箱根ブランド」は確かに強いものがありますが、さらに磨きをかけ、世界中、日本中の人々が箱根を注目するような新たな観光地を築いていく時期だと思っています。行政としては、景観やインフラの整備をしっかりして、お客様がまた来たくなるように、安心して観光ができるようにしなければなりません。民間の方々には、今までの商品に一味加えて、オンリーワンといわれるようなものを築いて欲しいし、またどこにも負けないおもてなしができるような工夫をして欲しいと思っています。そのためには、行政も経済的な支援をしていきますし、アイディアで足りないものがあれば、コンサルタントとうまくマッチングさせたりして、新しいものを作り上げていくチャンスだ、と。国とも積極的にタイアップし、DMO(観光協会)とも協力して知恵を出し合ってやっていく。海外からのお客様をお迎えするにあたっては、IT化やキャッシュレス化などの対応も必要でしょうから、箱根町としてしっかり支援していきます。

 箱根町は、これまで「箱根ブランド」に甘えていてPRが下手だといわれています。分かりやすくいえば、高尾山や日光のようにミシュランガイドの星をもらえる観光地として、アフターコロナを見すえて、世界に訴求していくことも必要です。

 今を生きる私たちは、この箱根のブランド力を将来にわたって守り、磨き、引き継ぎ、持続可能な観光地であることを目指していかなければなりません。箱根を訪れる多くのリピーターの期待と継続した再訪意欲を満たしつつ、新たな来訪者にとっても一度では味わい尽くせない場所になること、そして、就職や結婚など人生の様々な局面ごとに訪れたい場所になることが、今後も箱根が継続して観光地として発展していく鍵であると考えています。春の観光シーズンがまた始まります。町の内外から愛される箱根をめざしてまいります。

かつまたひろゆき
1954年 箱根町生まれ。78年箱根町役場入庁。総務部、企画室、教育委員会などを経て、2020年11月15日箱根町長就任。(箱根湯本駅を臨む町長室のベランダにて、2021年3月11日撮影)

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