21.11.12 update

60年安保当時のテーマ曲「アカシアの雨がやむとき」 歌手・ 西田佐知子

プロマイドで綴る
わが心の昭和アイドル&スター

大スター、名俳優ということで語られることがない人たちかもしれないが、
青春の日々に密かに胸をこがし、心をときめかせた私だけのアイドルやスターたちがいる。
今でも当時の映画を観たり、歌声を聴くと、憧れの俳優や歌手たちの面影が浮かび、懐かしい青春の日々がよみがえる。
プロマイドの中で永遠に輝き続ける昭和の〝わが青春のアイドル〟たちよ、今ひとたび。

企画協力・写真提供:マルベル堂

 昭和38年のNHK紅白歌合戦の紅組メンバーを見ると、美空ひばり、越路吹雪、朝丘雪路、ザ・ピーナッツがいればこまどり姉妹もいる、多くのコマーシャルソングでもおなじみだったコメディエンヌ楠トシエ、倍賞千恵子に吉永小百合の女優陣、梓みちよ、島倉千代子、裾の幅が異様に広いフランス貴族の女性が身に着けるような半球状のドレスにシルクのロング手袋、髪にはティアラを飾り、ハンカチを手に演歌を歌えば〝おケイちゃん〟の声がかかる松山恵子、そして西田佐知子と、演歌、ポップスではくくれない幅広いジャンルの歌手たちが出演しているのに目を見張る。白組だって負けていない。「硝子のジョニー」のラテン系歌手アイ・ジョージ、俳優の森繫久彌、植木等、オペラ界の立川澄人、シャンソン歌手芦野宏、都会派歌謡曲のフランク永井、三波春夫、村田英雄、ダーク・ダックスにデューク・エイセス、坂本九、初出場の北島三郎に舟木一夫とバラエティに富む。

©マルベル堂

 同じような名前やスタイルの歌手が並ぶ、昨今のNHK紅白歌合戦とはずいぶんと趣が異なる。そして西田佐知子の歌も一口では言い切れない、彼女だけのジャンルであった。演歌ではなく、ポップスでもなく、あえてひと言で表現するとしたら歌謡曲なのだろうか。あるいは、流行歌。流行歌と言えば、昭和60年安保当時の世相を表現するテーマ曲のように扱われているのが西田の大ヒット曲「アカシアの雨がやむとき」だ。安保闘争で、疲弊した若者たちが、西田佐知子の乾いたボーカルでムーディに歌われるこの曲に共鳴したという。現在でも、当時の安保闘争のニュース映像のBGMとして、この曲が流されている。美空ひばり、小林旭、美輪明宏、舟木一夫、いしだあゆみ、氷川きよしはじめ多くの歌手がカバーしているが、この曲は西田佐知子の、どこか物憂げなあの声だからこそ聴きたくなるのだ。親交のあった浅丘ルリ子主演で映画化もされ、本人も出演していた。まぎれもなく、昭和を代表する一曲である。

 昭和46年に関口宏と結婚し芸能界を退いたが、関口が司会を務めていた「スター千一夜」での旭化成のCMで、家族でくつろぐ映像が流されていた。そして、西田の歌は、菊正宗のCM曲「初めての街で」でも聴くことができた。井上陽水のカバーでも知られる「コーヒールンバ」に、「東京ブルース」「赤坂の夜は更けて」「信じていたい」「涙のかわくまで」「女の意地」などなど、感情が表に出ることのない、無表情な声のイメージが僕にはあるのだが、声が伸びきって張り詰めた瞬間の西田佐知子の声が好きだった。クールで、無口で、大人の女。日本の歌謡界にあって、独自の世界を築いた歌手だったと思う。今の時代、こんな歌手はどこにも見当たらない。

文:渋村 徹(フリーエディター)

※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。


プロマイドのマルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。2021年には創業100年を迎えた。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。

マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F

読者の皆さまへ

あなたが心をときめかせ、夢中になった、プロマイドを買うほどに熱中した昭和の俳優や歌手を教えてください。コメントを添えていただけますと嬉しいです。もちろん、ここでご紹介するスターたちに対するコメントも大歓迎です。

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