21.12.22 update

初代御三家の兄貴株が80歳での歌手引退宣言 橋幸夫

プロマイドで綴る
わが心の昭和アイドル&スター  

企画協力・写真提供:マルベル堂

大スター、名俳優ということで語られることがない人たちかもしれないが、
青春の日々に密かに胸をこがし、心をときめかせた私だけのアイドルやスターたちがいる。
今でも当時の映画を観たり、歌声を聴くと、憧れの俳優や歌手たちの面影が浮かび、懐かしい青春の日々がよみがえる。
プロマイドの中で永遠に輝き続ける昭和の〝わが青春のアイドル〟たちよ、今ひとたび。

※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。

 本年、2023年5月3日の80歳の誕生日をもって歌手活動から引退するとの宣言をした橋幸夫。60年(昭和35年)に「潮来笠」でデビューしたのは17歳のとき。63年の歌手活動にピリオドが打たれる。橋と言えば、後に舟木一夫、西郷輝彦と共に、時の人気アイドルのトップ3を称して呼ばれた〝御三家〟の中では兄貴分で、舟木が63年、西郷が64年デビューだから、舟木、西郷がデビューするまでは、人気と実力を兼ね備えた若手ナンバーワン歌手の座をほしいままにしていた。デビューの年にはNHK紅白歌合戦にも初出場を果たし、通算19回の出場を誇る。

「潮来笠」では、第2回日本レコード大賞新人賞に輝き、2年後には吉永小百合とのデュエット曲「いつでも夢を」でレコード大賞を受賞、さらに4年後には「霧氷」で当時初の2度目の大賞に輝いた。1971年には「子連れ狼」で大衆賞も受賞している。「潮来笠」「沓掛時次郎」「佐久の鯉太郎」といった股旅演歌、「恋をするなら」「あの娘と僕(スイム・スイム・スイム)」「恋のメキシカン・ロック」などのリズム歌謡、その他にも「江梨子」「雨の中の二人」と、多くのヒット曲を連発していた。「あの娘と僕」は、65年の紅白歌合戦ではトリを務め、男性歌手全員が応援で当時流行った〝スイム〟を踊っていたシーンは記憶に残っている。さらに紅白歌合戦で言えば、「霧氷」でレコード大賞を獲得した66年、白組は、橋、同年に「絶唱」で歌唱賞を獲得した舟木、「君といつまでも」で特別賞に輝いた加山雄三の3人を連続で登場させるという強力なラインナップを組んだ。このあたりが、当時の紅白歌合戦の番組意図が垣間見られておもしろい。

 2000年頃には、「G3K」として舟木、西郷と共にユニットを組みコンサート活動をしていたことも思い出される。3人で歌った「小さな手紙」はNHK「みんなのうた」でも流れていた。テレビドラマ「水戸黄門」の第29部から32部にかけては、3人で主題歌「ああ人生に涙あり」も担当していた。

 また、デビュー当時から、まげ姿が市川雷蔵に似ていると言われ、大映映画の時代劇の主題歌にも起用され、本人も多くの映画に主演している。62年の橋の同名曲を映画化した『江梨子』では、当時の大映の若手女優で、姿美千子と人気を二分していた三条魔子と悲恋物語を演じ、多くの女性ファンの紅涙をしぼった。三条はこの映画のヒットを機に三条江梨子と改名した(後に再び三条魔子に芸名を戻した)。その後は松竹映画での出演が増え、『舞妓はん』などで倍賞千恵子とコンビを組んでいた。橋のデビュー10周年記念映画『東京⇔パリ青春の条件』では、舟木、西郷とも共演を果たした。どこかミュージカルふうな映画だった。

 現在は最後のコンサートツアー「人生は長いようであっという間 夢を持って生きよう!」を開催中。12月22日にはニューシングル「この道を真っすぐに」と、ベストアルバム「ベストヒット全曲集」をリリースした。昭和歌謡曲の現役最古参の橋の引退宣言は、流行歌という言葉がしっくりくる日本の歌謡界の一つの時代の終焉を実感させられる。

文:渋村 徹(フリーエディター)


プロマイドのマルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。2021年には創業100年を迎えた。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。

マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F

読者の皆さまへ

あなたが心をときめかせ、夢中になった、プロマイドを買うほどに熱中した昭和の俳優や歌手を教えてください。コメントを添えていただけますと嬉しいです。もちろん、ここでご紹介するスターたちに対するコメントも大歓迎です。

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