22.01.26 update

カムカムのラジオに思わず耳をそばだてた「湖愁」を歌った松島アキラ

プロマイドで綴る
わが心のアイドル&スター

大スター、名俳優ということで語られることがない人たちかもしれないが、
青春の日々に密かに胸をこがし、心をときめかせた私だけのアイドルやスターたちがいる。
今でも当時の映画を観たり、歌声を聴くと、憧れの俳優や歌手たちの面影が浮かび、懐かしい青春の日々がよみがえる。
プロマイドの中で永遠に輝き続ける昭和の〝わが青春のアイドル〟たちよ、今ひとたび。

企画協力・写真提供:マルベル堂

 

 現在放送中のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の1月24日の放送で、劇中で流れていた曲に耳を傾け、懐かしいと思われた年配の方もけっこういらしたのではないでしょうか。昭和36年に松島アキラが歌ってヒットした「湖愁」である。そういえば、以前の放送回でも同じく昭和36年に佐川ミツオ(現・佐川満男)が歌い、当時のリバイバル・ブームに乗じてヒットした「ゴンドラの唄」が流れていたこともあった。舞台となる時代を表現するのに、当時ヒットした曲をバックに流すのは、ごく一般的な演出だが、渋い選曲に、スタッフにはかなり昭和歌謡に詳しい人がいるのではないかと、思わずニンマリしてしまう。その後、佐川満男が俳優としてもドラマに出ているのには、遊び心のある仕掛けだと、勝手に楽しんでいる。

 さて、松島アキラだが、いきなりデビュー曲「湖愁」がヒットし、その後も当時流行していた青春歌謡を歌い、その愛くるしい容貌から、当時日本でペットとして人気があった犬種「スピッツ」の愛称で呼ばれ、女性たちに人気だった。日劇ウエスタンカーニバルにも出演し、昭和37年にはNHK紅白歌合戦にも初出場したが、歌ったのは「湖愁」ではなく、「あゝ青春に花よ咲け」だった。

©マルベル堂

「湖愁」と言えば、舟木一夫のデビューエピソードで語られる曲としても、歌謡界では知られる。名古屋市内のジャズ喫茶で、「松島アキラショー」が開催された折、ステージ上の松島アキラが、誰か「湖愁」を一緒に歌わないかと客席に声をかけたところ、一緒にステージを観ていた同級生に手首を掴まれ手を挙げた高校生がいた。それが後の舟木一夫だった。舟木は松島と一緒に「湖愁」を見事に歌い上げ、取材で来ていた「週刊明星」の記者の目に留まり、記者はそのときの出来事をホリプロの堀威夫氏に話したところ、堀氏が興味を示しデビューへとつながったのだ。

さらに「湖愁」はリリースの翌年に映画化もされ、瑳峨三智子、鰐淵晴子、田村高廣、川津祐介らと一緒に松島自身も出演していた。「湖愁」は昭和歌謡の歴史に名を残す、いい歌である。

文:渋村 徹(フリーエディター)

※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。


プロマイドのマルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。2021年には創業100年を迎えた。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。

マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F

読者の皆さまへ

あなたが心をときめかせ、夢中になった、プロマイドを買うほどに熱中した昭和の俳優や歌手を教えてください。コメントを添えていただけますと嬉しいです。もちろん、ここでご紹介するスターたちに対するコメントも大歓迎です。

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