17.12.24 update

秦野市立 宮永岳彦記念美術館

 北口改札を出て少し歩くと、まず秦野市計絵の日帰り温泉〈弘法の里湯〉に出合う。隣駅の伊勢原は大山詣でなどを楽しむ山ガール、山ボーイにとっては鶴巻温泉はセットなのかもしれない。2017年11月から大山と鶴巻温泉を結ぶバスの試運転の開始された。

〈弘法の里湯〉の足湯は無料で利用することができる。土産物産があり、そば屋もある。そして〈秦野市立 宮永岳彦記念美術館〉も併設されている。

 宮永画伯は、〝光と影の華麗なる世界〟と称される美人画で知られる画家である。宮永の実家は秦野で、昭和21年から15年にわたり秦野市名古木のアトリエで創作活動を続けていた。

ジョーさんも思わず「懐かしい!」と声をあげたぺんてるくれよん。くれよんケースの絵は宮永によって描かれた。

 秦野ゆかりの画家・宮永は、昭和23 年から40年ころまで、「箱根」「丹沢」「江の島」など小田急沿線の観光ポスターを手がけている。宮永にはグラフィックデザイナーとしての キャリアもあった。館内には小田急関連作品を常設展示する〈小田急コーナー〉が開設されている。風景にエキゾチックな美女を配したデザインのポスターは、人々の足を止め、 旅心を大いに掻き立てたという。昭和32年に登場したロマンスカー13000形(SE)の内装、外装デザインも手がけ、メインカラーであった〝バーミリオンオレンジ〟が現在 の車両にも引き継がれている。ロマ ンスカー好きのジョーさんは食い入るように熱心に眺め、
「いやあ、温泉に入ることだけを楽しみに来て予期せぬ収穫です。すごく楽しい展示 ですね」と嬉しそうだ。宮永は「武 相旅情」「沿線案内」など特急の車 内誌の表紙画、昭和37年に誕生した 小田急百貨店の包装紙も手がけた。 秦野に住んでいた当時「小田急線には馴染みがあり、普通旅客で私ほど続けて利用しているものはないのでは」と宮永は語っていたらしい。  

決して大きくはないが、訪れる大きな意義を感じさせられた美術館。鶴巻温泉の地に文化の香りを添える施設である。また、まるで公園に遊びにでも行くように子どもたちがいつも出入りし、気軽に美術に接することができる、敷居を感じさせない雰囲気もすばらしく、秦野市の、人を中心に据えた町と取り組む姿勢のようなものを感じさせられた。

〔住〕秦野市鶴巻北3-1-2 〔問〕0463-78-9100 〔開館〕10:00~19:00(入館は閉館の30分前まで) 〔休〕月曜(祝日の場合はその翌日)、12月28日~1月2日 〔観覧料〕一般300円、高校生以下、障害者手帳をお持ちの方と介護 者1名は無料

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