24.02.27 update

第8回【キジュからの現場報告】芝居はボケ防止になるという話─萩原 朔美の日々     

—老体からは逃げられない。でも笑い飛ばすことは出来る—

萩原 朔美さんは1946年生まれ、11月14日で紛れもなく77歳を迎えた。喜寿、なのである。本誌「スマホ散歩」でお馴染みだが、歴としたアーチストであり、映像作家であり、演出家であり、学校の先生もやり、前橋文学館の館長であり、時として俳優にもなるエッセイストなのである。多能にして多才のサクミさんの喜寿からの日常をご報告いただく、連載エッセイ。同輩たちよ、ぼーッとしちゃいられません!

連載 第8回 キジュからの現場報告 

▲2024年1月、筆者はザムザ阿佐谷で5日間にわたって寺山修司朗読劇に出演した

先日ひとつの楽屋に、年齢の近い者が数人一緒になった。皆んな話し好きだ。出番を忘れて話しに夢中になってしまう。(笑)毎回若い役者が出番直前呼びに来てくれるようになってしまった。そんな話しの中で、 

「ボケるって、死ぬことの練習じゃないかと思うんだ」

と、三上寛さんが言った。

なるほど、と思った。ボケている時間は自分がなくなっている時間だ。それが段々長くなって、しまいに四六時中ボケてしまうと、もう死んだ事と同じことだ。

それを聞いていた串田和美さんが

「完全にボケた人が突然無くしたと思っていたメガネが靴箱の靴の中にある!って思い出したら、生き返るってことかね」

と言う。皆んな爆笑した。そう言えば、時々つまらない事を思い出す事があるのだ。ノートに挟んだお金とかだ。

しかし、馬鹿話した後でも、大久保鷹さんも、三上寛さん、串田和美さんも本番はまったく年齢を感じさせない。芝居をやっている間、加齢の時計は止まってしまうのだろう。

▲次の出番を待つ三上寛さん(左)と筆者

第7回 喜寿の幕開けは耳鳴りだった

第 6 回 認知症になるはずがない
第 5 回 喜寿の新人役者の修行とは
第4回 気がつけば置いてけぼり
第3回 片目の創造力
第2回 私という現象から脱出する
第1回 今日を退屈したら、未来を退屈すること


はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長、金沢美術工芸大学客員教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。


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