萩原朔美のスマホ散歩
散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。
第22回 2022年2月28日
街で見かける自転車のピクトグラムは、大半ハンドルが左側だ。左に向かって走り去ろうとしている。
道路が左側通行だから、それと関係あるのかも知れない。道路交通法では、自転車も自動車と同じ扱いだ。
ハリウッド映画の教科書では、カメラは、左から右にパンするのが自然、となっている。逆はよくない動きなのだ。となると、日本の標識の自転車は不自然な動きになってしまう。(笑)(黒澤監督の「影武者」だと兵は右から左に攻める。)
まあ、英語は左から右に表記するから、その手の動きを自然に感じ、日本語の本は、右から左に読み進むので、その方向がなんでもしっくりくるのだろう。実は、私は左利きなので右から左がどうもしっくりこない。自転車のマークを見るたびにぎこちない気分になる。自転車が乗られるのを拒否している風に見えるのだ。こんな少数派もいることを知ってほしい。(笑)
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長を務める。