私が入社した72年には、「キイハンター」「プレイガール」「銭形平次」「大岡越前」「遠山の金さん捕物帳」「長谷川伸シリーズ」「デビルマン」「マジンガーZ」など、実写からアニメーションまで25作品が制作されている。映画産業はすでに斜陽という時代だった。東映では、岡田茂2代目社長言うところの、テレビは子供から大人までが楽しめる〝良性感度〟、映画はテレビでは観られない作品を作るというバイオレンス、エログロ、ナンセンスといった〝不良性感度〟と捉える時代だった。完全に棲み分けされていた。
「相棒」シリーズ、「科捜研の女」シリーズ、「仮面ライダー」シリーズなどはテレビ作品が映画化に発展したが、東映では基本的には映画作品をテレビ化するという意識はあっても、テレビ作品を映画化するという感覚はなかった。テレビ作品を映画化した最初は「あぶない刑事」シリーズだったろうか。今は、テレビ局が映画制作に興味を持ち始めて久しいが、「相棒」の映画化はテレビ局主導により映画化された。「踊る大捜査線」もフジテレビ主導により東宝で映画化され、爆発的なヒットになった。放送外収入を得るというテレビ局の多角化であろう。当時は、テレビ局には映画を放送する○○映画劇場といった番組があって、テレビ局は高い料金を払って洋画を購入していた。それを考えると、テレビ局が、映画興行と、テレビ放映とをセットで考えてもおかしくない。それが大成功したのは「踊る大捜査線」だった。映画会社としてもテレビで視聴率を取れた作品の映画化は、興行的にも安定するという目論見もあった。東映でもテレビ作品を映画化しようという動きも出てきているが、映画化するためにテレビ作品を作るという考えではない。あくまで結果である。
もちろん、東映だけでなく、他の映画会社もテレビ映画にもその後参画するわけであるが、たとえば、大映のテレビ制作を担っていたのが大映テレビ室(大映倒産後は大映テレビ株式会社という別会社になった)で、「ザ・ガードマン」をはじめ、山口百恵主演の「赤いシリーズ」、「スチュワーデス物語」「不良少女とよばれて」などのヒット作を生み出して、いわゆる〝大映ドラマ〟と呼ばれていた。TBS系列の作品が多かった。
東映制作のテレビ映画を一部ではあるが、ご紹介しておこう。すでにご紹介した作品を除いて、「七色仮面」「白馬童子」「少年ケニヤ」「特別機動捜査隊」(東映テレビ映画初の1時間番組)、栗塚旭主演「新選組血風録」、近衛十四郎、品川隆二「素浪人月影兵庫」、第一線の女優たちの競演による「大奥」「大坂城の女」「徳川おんな絵巻」、天地茂「非情のライセンス」、小川真由美「アイフル大作戦」、佐久間良子、岡田茉莉子、浅丘ルリ子、山本富士子、岸惠子、岩下志麻らが日本文学の名作の女たちを演じた「女・その愛のシリーズ」、特撮シリーズ「秘密戦隊ゴレンジャー」、丹波哲郎「Gメン’75」、高橋英樹「桃太郎侍」、松平健「吉宗評判記・暴れん坊将軍」、高峰三枝子、山村聰らが共演した「人間の証明」、千葉真一の「柳生一族の陰謀」「服部半蔵 影の軍団」、二谷英明、西田敏行「特捜最前線」、松田優作「探偵物語」などなど、読者の方々にもお楽しみいただけた作品も多いのではないだろうか。
次回は東映4代目社長岡田裕介のことなどについてお話しよう。