みんなが拍手を送った勧善懲悪劇
文=村松 友視
SPECIAL FEACIRE 2010年1月25日号 Vol.3より
昭和30年代から40年代はじめころまで、 各映画会社が専属のスターたちを総動員して記念作品や正月作品としてオールスター・キャスト映画を製作していた。 なかでも東映の〝忠臣蔵〞映画や、〝任侠〞映画には 子供から大人までが胸躍らせた。
なにしろ、遠山の金さん、旗本退屈男、むっつり右門、 一心太助、若さま侍らが一堂に会すのである。
それに美空ひばりをはじめとする東映城の姫たち、 いつもながらの悪役たち。 すべての役者の貌が、いまでも人々の思い出の中に生きている。
東映時代劇は、庶民にとって最高の娯楽だったのである。
取材協力:東映株式会社
むらまつ ともみ
作家。1940 年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。出版社勤務を経て文筆活動に入る。82 年『時代屋の女房』で第87 回直木賞、97 年『鎌倉のおばさん』で第25 回泉鏡花文学賞受賞。『私、プロレスの味方です』『夢の始末書』『アブサン物語』『百合子さんは何色』『幸田文のマッチ箱』『淳之介流-やわらかい約束』『永仁の壺』『ヤスケンの海』『時のものがたり』『清水みなとの名物は-わが心の劇団ボートシミズ』『雷蔵の色』など多数の著書がある。(視は、示篇に見)