SPECIAL FEATURE 2016年10月1日号より
『人間の條件』『壁あつき部屋』『上意討ち―拝領妻始末』などから
社会派、反戦、反権力、ヒューマニズムといったテーマで語られる映画監督 小林正樹。
そして『怪談』や『切腹』などでうかがえる
會津八一に師事して学んだ東洋美術を根幹とした美意識の追求。
監督が生涯で遺した全22作(『人間の條件』を3作と換算)を見直してみると、映画監督 小林正樹が撮りたかったテーマが実に明確に伝わってくる。
そして、映画には、最後まで一途に闘う個人の姿が映し出される。
それは小林正樹の映画監督としての姿勢に重なる。
生誕100年を迎えた本年、今一度小林正樹の映画と向き合い
今回、小林作品の魅力を紹介していただいた米谷紳之介さんいうところの
「もっとも映画監督らしい映画監督」の心境に触れたい。
企画協力&写真提供=一般社団法人小林正樹監督遺託業務世話人会・芸游会、
松竹株式会社、東宝株式会社、岩波書店、講談社、新潟市會津八一記念館
文=米谷紳之介
映画監督、脚本家。1916年(大正5)2月14日、北海道小樽市生まれ。早稲田大学在学中には東洋美術を専攻し、會津八一に師事。41年、松竹大船撮影所助監督部に入所するが、翌年応召、満州でソ満国境警備につく。終戦は宮古島で迎えたが、沖縄嘉手納捕虜収容所で1年の捕虜生活を送る。この時期の過酷な体験が、徹底した戦争反対の意思を露にした反骨の映画人生の根幹ともなる。46年に復員後、撮影所に戻り、助監督として木下惠介監督につく。52 年に中編『息子の青春』で監督デビューを果たし、53 年の『まごころ』では木下惠介が脚本を手がけた。9時間半におよぶ五味川純平原作の大長編『人間の條件』6部作はベネチア国際映画祭サン・ジョルジュ賞はじめ国内外の映画賞を受賞。初の時代劇『切腹』をはじめ『怪談』『上意討ち―拝領妻始末』などで海外でも高い評価を受けるようになった。遺作は85年の円地文子原作の『食卓のない家』。96 年10月4日死去。享年80。翌年、毎日映画コンクール特別賞、日本アカデミー賞協会会長特別賞が授与された。
¿Como le va?Vol.29・特集「映画監督小林正樹の信念」の記事をPDFでご覧ください。